2019 Fiscal Year Research-status Report
Typological investigations of the concept of "construal" in cognitive linguistics
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19K00603
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
守田 貴弘 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (00588238)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ダイクシス / 認知文法 / 捉え方 / 類型論 / 日本語 / フランス語 |
Outline of Annual Research Achievements |
理論的な探求としては空間ダイクシスが関係する認知文法的な研究および原典とも言えるLangacker (2008) を中心に考察を行った.認知文法での意味とは概念化であり,概念化は「概念内容」と「捉え方」から構成される.そのため,産出された言語表現は「客観的な概念内容をいかに認識しているのかの現れ」として考えられる.一方,類型論では意味の共通性を仮定しながら各言語で表現形式が異なることを前提とするため,表現形式の違いが認識の違いに直結する認知文法とは整合しない.問題となるのは「捉え方」の作用をいかに評価するかという点にある.現時点では,言語表現が話し手の認識(のすべて)を表象しているわけではなく,可能な認識の総体から主体的に選択された表現もあれば,何らかの制約によって選択せざるをえない表現もあると考えられるため,言語表現と外界の認識を切り離す観点を追究している. 実証面において,本研究は空間ダイクシスの言語表現およびジェスチャー表現の実験的研究を行っている.ダイクシスの認知文法的な研究では,「来る」のような直示動詞は主観的な表現であり,「私の方に」のように話し手自身が言語化された表現は客観的な表現とされる.これにもとづき,日本語では主観的な表現が好まれるため日本語話者は主観的な世界の捉え方をすると言われることが多い.対照的に,フランス語の言語表現ではより客観的な表現が多いことが本研究でも確認されているが,これをただちに話し手の認識に結びつけて議論することはできない.両言語話者のジェスチャー表現を観察したところほとんど違いはなく,話し手がグラウンドとなった主観的表現だと見なすことのできるジェスチャーが多いことも明らかとなってきているからである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度はLangacker (2008) を中心とした理論的側面の考察を行ったため,研究遂行上の困難はなかった.さらに,既存のデータに加えて量を増やすために追加の実験を日本語話者を対象として行うなど,仮説を補強するためのデータも集まってきていると言える. 途中成果ではあるが,いくつかの会議で口頭発表を行い,その中から最初の論文執筆の目処も立っていることから,おおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究内で解決すべき課題として次の3点があげられる.(1) 主観性/客観性の観点から言語表現とジェスチャー表現でずれが生じている場合に,どのような心的表象からこれらの表現に至ったのかを説明するモデルを構築する.(2) 言語的に表現されない移動様態がジェスチャーでは頻繁に表現されるという先行研究があるのに対し,本研究のデータからは「言語的に表現されないダイクシスがジェスチャーでは表現される.しかし,言語的に表現されない様態はジェスチャーでも表現されない」という現象が確認されている.この現象について,ダイクシスと様態を概念精査することで説明を試みる.(3) 日本語においては「行く」と「来る」が表す方向とジェスチャーが表す物理的方向にずれが生じることがあるのに対し,フランス語では生じない.特に「来る」とvenirが持つ機能的ダイクシスを表す能力については,アンケート等も踏まえた調査を準備している.(1)および(2)を優先的に進め.(3)については渡航時期を慎重に検討するか,調査の手法を変更することも視野に入れて研究を推める予定である.
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Research Products
(4 results)