2022 Fiscal Year Research-status Report
ザンジバルにおけるスワヒリ語諸変種の関係を探るための挑戦―語彙と文法に着目して―
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19K00604
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
竹村 景子 大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 教授 (20252736)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | スワヒリ語諸変種 / ザンジバル島 / ペンバ島 / 文法記述調査 / 語彙調査 / マイクロバリエーション |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、3年ぶりにタンザニア連合共和国に出張することができ、9月9日~20日の日程で調査を行った。ザンジバル島では北部県北部A郡のチャアニ村に赴き、2019年度までもずっとコンサルタントを務めていただいた方に依頼し、「チャアニ変種」について従来の調査で聞き逃していた文法的疑問点をいくつか確認した。また、「トゥンバトゥ―ゴマニ変種」の民俗語彙収集のために、海洋生物の絵を用いて聞き取りを行った。ただ、今回もペンバ島における「ミチェウェニ変種」の調査を行う時間は確保できなかったため、来年度の課題とする。 研究の社会的還元としては、「「アフリカ文学」と言語問題―スワヒリ語作家サイド・アフメド・モハメドを中心に―」(@洪庵忌―適塾の夕べ―、2022年6月6日)、「大阪大学外国語学部の「これまで」と「これから」」(@中之島アートエリアB1、21世紀懐徳堂シリーズvol.4「箕面キャンパスの挑戦~新たなキャンパスの在り方をめぐって~」、2022年6月30日)、「ザンジバルの村での生活を通して見えたもの」(@第4回大阪大学サイバースポーツコンプレックス(CSC)シンポジウム基調講演、2022年8月10日)、「大阪大学外国語学部の歩み(@在タンザニア日本国大使館、2022年9月18日)、「周縁から見た世界~スワヒリ語とタンザニアでの経験を通して~」(@第2回箕面市姉妹都市交流フォーラム「姉妹都市交流がめざす世界の平和~私たち市民にできること~」、2022年11月27日)、「周縁を学ぶことの面白さと魅力―スワヒリ語とアフリカ地域研究を通して―」(@国際教育講演会「真の国際人を育てるために教育現場ができること」一般社団法人「学びにSPARKを」主催、2023年2月13日)という講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2022年度はタンザニア連合共和国でのフィールドワークが行えたものの、学部長職を拝命していることから学内業務との兼ね合いで長期にわたる現地滞在はかなわず、これまで重点的に記述研究を行ってきたチャアニ変種以外の変種に関する調査を進めることができなかった。チャアニ変種についても、2019年度に進まなかった基礎語彙3000語の収集および確認を進める予定であったが、それもかなわなかった。本研究では、最終的に複数変種の「基礎文法・語彙まとめ」を行うことを目指しているが、手始めとして行う予定のチャアニ変種についても確認が遅れていることで、かなりの危機感を覚えている。 現在はオンラインによる調査も行われているかも知れないが、本研究が対象としているスワヒリ語諸変種が話されている地域では停電が多く、あるいは、そもそも電気がまだ通っていない村落部もあるため、調査協力者にオンラインで質問をするという方法を採ることが難しい。また、新しく調査を開始するためにはその村落部の長からの許可を必ず得なければならない。それはオンラインでは到底不可能である。 以上の理由から、残念ながら研究の進捗状況は遅れていると言わざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後のコロナ禍の状況にも左右されるが、2023年度も現地調査が可能になった場合は、少なくともチャアニ村における基礎語彙3000語の収集、確認と、「トゥンバトゥ―ゴマニ変種」および「ミチェウェニ変種」の基礎語彙600語の収集をはかる。また、文法については、バントゥ諸語文法調査票を用いて基礎文法事項の収集をはかるとともに、バントゥ諸語特有の動詞派生について特に重点的にデータ収集を行いたい。ザンジバル島全体について網羅できるかどうかは現時点では不明であるが、少なくともザンジバル島内で「北部」「中部」「南部」と大雑把に分けられてきた「方言」の実態を明らかにすることと、また、ペンバ島については「ペンバ方言」と一括りにされてきたものの実態を明らかにすることが目標であることから、少なくとも各地域で3変種ずつくらいのデータを収集するように努めたい。 なお、コロナ禍により2023年度に現地調査が困難である場合、現地在住の研究協力者である宮﨑久美子氏に全面的に調査遂行を依頼する予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度、2021年度は、コロナ禍のために本研究の最大の研究費使用項目である「海外渡航費」がゼロとなったため、2022年度はかなりの額の繰越金があった。2022年度には短期間ではあったがタンザニア連合共和国への渡航が可能となり、また、航空運賃の高騰により海外渡航費の額は増加したが、それでも使い切ることはできなかった。 2023年度は、コロナ禍の状況にもよるが、研究代表者が短期間でも現地渡航することを予定しており、また、現地在住の研究協力者にも複数の村落部に出向いて新規の調査協力者を得て調査を開始してもらう予定であることから、相応の費用が必要である。
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Research Products
(1 results)