2023 Fiscal Year Annual Research Report
現代バスク語諸方言の音韻と文法の記述 ~地域差と世代間差の二つの側面から~
Project/Area Number |
19K00611
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
吉田 浩美 神戸市外国語大学, 外国学研究所, 客員研究員 (70323558)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 現代バスク語 / 地域変種 / 世代間変種 / 文法 / 音韻 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度はスペイン領バスク自治州ギプスコア県アスペイティアにおいて当地のバスク語地域変種であるバスク語アスペイティア方言の子世代の話者を対象に,同じくギプスコア県セストアにおいて当地のバスク語地域変種であるバスク語セストア方言の親世代の話者および子世代の話者を対象に,文法に関する調査を行なった.具体的には,(1)近隣のロマンス諸語の受動態構文の引き写しと考えられる構造(書き言葉を中心に古くから用いられている構造である)を,当該方言の話者がどのように捉えているか,(2)バスク語の指示語の体系は従来「これ・それ・あれ」の3系列であるが,その用法が変化してきていることが日常生活での観察から見て取れるが,実際に子世代と親世代でどのように違ってきているか,(3)英語の不定冠詞に相当する要素が頻繁に用いられるようになってきていることが日常生活での観察から見て取れるが,実際に子世代と親世代でどのように違ってきているか,以上の3点について上記の地域変種について面接による聞き取り調査を行なった.いずれの場合も,いずれの地域変種でも親世代が保守的な傾向が見られ,またセストア方言よりもアスペイティア方言の話者の方がより保守的である傾向が見られた. 研究期間全体を通じては,上記の地域変種以外に,スペイン領バスク自治州ギプスコア県アスコイティア,同サラウツ,同スマイアの各地域変種について文法調査と音韻の調査を行なってきたが,パンデミックによる現地調査の中断などの影響で,調査協力者の調達が難しくなった地域変種もあり,特にスマイア方言については,他の方言に比べ,データの収集が不十分となってしまった.データがある程度揃えられた地域変種については,音韻および文法の諸現象について幾つかの研究発表・論文としてまとめた.
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