2021 Fiscal Year Research-status Report
近代中国語資料たるUCB蔵フライヤー・コレクションに関する基礎的研究
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19K00614
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
千葉 謙悟 中央大学, 経済学部, 教授 (70386564)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | John Fryer Collection / Syllabary / 音訳漢字 / 訳音表 / 翻訳語 / 官話 / 北京語 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はイギリス人ジョン・フライヤー(John Fryer, 傅蘭雅, 1839-1928)の没後にカリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley, UCB)に寄贈されたジョン・フライヤー・コレクション(John Fryer Collection, JFC)にて申請者が発見したSyllabary for the transfer of foreign names into Chinese(以下Syllabary)をとりあげてた。SyllabaryはEnglish-Chinese Technical Vocabularies, etcと題された全10種の草稿集の1種であり、現在の配列順では第2種にあたる。Syllabaryは鉛筆で1頁を縦4列に区切り、各縦列の左側にウェブスター式の発音記号で示された音節、右側に音訳漢字を記していく形式をもった、英語音節と音訳漢字との対照表である。 Syllabaryは西洋の事物や概念を表現するために19世紀から20世紀にかけて行われた翻訳語創造の試みを示すものとして非常に重要といえる。なぜならば翻訳語の一部を成す音訳語を統一的・系統的に生成するための試み、すなわち原語の一つ以上の音節に対し固定した漢字を与えるための近代早期の試みといえるからである。 今年度の研究ではSyllabaryの全体的な紹介とともに成書の背景、成書年代の推定、編者の推定を行い、音訳漢字の基礎方言の推定を試み、さらに音訳用字の特徴について分析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に挙げた課題に順調に取り組んでおり、特段の報告すべき致遠が見られていないため
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画にしたがい、JFC所蔵の上海語資料「上海土白」およびLessons in the Shanghai Dialectをとりあげる予定である。どちらも上海に滞在する欧米人を対象とした上海語の初級教科書である。この2冊は19世紀中期の上海語の音声面がラテンアルファベットで記された貴重な資料であるが、特に「上海土白」は現在目にする形式は全6冊を1冊に合訂した大部な草稿である。ここまでまとまった分量の上海語教本はこの時期において例がなく、今後の上海語研究において重要な位置を占める資料である。これらに関する報告は管見の限り見あたらず、解明すべき点が残る近代上海語について新たな研究資料を提供することができると考えられる。
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Causes of Carryover |
参加予定だった国内・国際学会が中止あるいはリアル開催が見送られたため旅費を使用する必要がなくなり、研究費の使用計画を再度練り直すことになった。多くは書籍費となったが、わずかな額を次年度に繰り越すことになった。1600円ほどであり特段の問題はないものと考えている。2022年度においては主に消耗品費に充当したい。
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Research Products
(2 results)