2020 Fiscal Year Research-status Report
命題態度動詞の「補部」の形式意味論研究:時制・相・法の観点から
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19K00617
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
楠本 紀代美 関西学院大学, 文学部, 教授 (50326641)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 形式意味論 / 時制 / 命題態度動詞 / 捕文標識 |
Outline of Annual Research Achievements |
命題態度動詞の「補部」節(いわゆる英語のthat-節に相当する節)は、一般的に当該動詞の直接目的語となる動詞補部として扱われる。しかし、その統語的意味的立ち位置は、同じく直接目的語となる名詞句と比べて不明瞭である点が多い。さらに、命題態度動詞の補部には、関係詞節や副詞節にはない時制・相・法の制限があり、制限がない場合にも意味解釈の違いが見られることもよく知られている。本研究は、埋め込み節の時制・相・法の振る舞いを中心に、命題態度動詞とその補部節の意味的・統語的特徴を明らかにすることを目的とする。その際に、英語や日本語に加えて、命題態度動詞の捕文の振る舞いにおいて日本語と共通点のあるスペイン語やトルコ語を研究対象に含め、比較言語学的観点から研究を進める。今年度は命題態度動詞の中でも特に叙実動詞とその補部標識として用いられる「なんて/とは」に焦点を当てて研究を行なった。「なんて/とは」は捕文標識として「太郎が来るなんて驚きだ」のような用法だけでなく、「太郎が来るなんて!」という用法がある。またこの構文に現在時制の「る」形が用いられるときには、通常には観察されない意味解釈が存在する。本研究ではそのような特殊な解釈を、一般的な埋め込み節における時制の意味解釈の規則のみから導き出せると結論づけた。この研究成果は、Kusumoto, Kiyomi. 2021. Nante/Towa are not Special: Reply to Sawada and Sawada (2020) 『英米文学』Vol LXV, 21-43.に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献調査は概ね終了し、データ収集も順調である。特に日本語に関しては、命題態度動詞の典型例である心理動詞や発話動詞のみならず叙実動詞とその捕文標識も対象に含め広い範囲で考察することができた。当初予定していた研究会での発表はコロナ禍の影響で行えなかったが、今後はZoomなどを利用して発表もしくはフィードバックをもらう機会を得る予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは主として個別現象への形式意味論的アプローチであったが、これらの理論的説明を統合し、命題態度動詞とその補部の普遍的な意味貢献について理論的に解明する。またAnand and Hacquard (2014)で提案された英語の心理動詞の分類とその類型論について、英語以外の言語についても検証を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、研究会や学会が中止またはオンライン開催となったため、旅費の支出がなくなり、次年度使用額が生じた。 2019年度に開催予定だった国際ワークショップが2年延期され、2021年度末に開催が予定されているため、旅費として使用する。
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