2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K00623
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
石田 尊 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (40387113)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 従属節 / 主格認可 / 場所ヲ格 / 存在文 / 叙述 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は「日本語の統語的他動性システムに関する研究」と題した本研究(4カ年計画)の1年目にあたり、研究実施計画に沿って主格・対格等の構造格の認可、および文法格後置詞句の格の認可に関する分析を進めた。また、本研究以外の研究等の成果の反映もあり、当初の予定以上の研究の進捗を見た。 主格・対格等の構造格の認可に関しては、基本的には2018年度までの研究成果に基づくものではあるが、ナガラ節内での主格の認可に関する論文を公表した(「ナガラ節内における主格の認可について」『日本語統語論研究の広がり』くろしお出版、第9章)。この論文では、時制辞が形態的には現れない従属節においても、従属節の時間指示が主格の認可に関わっていること等を示した。 文法格後置詞句の格の認可に関しては、特に場所ヲ格の意味的な分類と格の認可に関する口頭発表を行い、場所ヲ格は他の場所格句と同様に後置詞句であり、かつ二次述部用法と修飾部用法とに分類できること等を示した(「場所ヲ格の意味論・統語論」第163回関東日本語談話会、2019年5月)。 2019年度は、本研究と同時に進行していた辞典(三省堂『明解日本語学辞典』2020年5月刊行予定)の項目執筆や授業における大学院生とのディスカッション等をきっかけとして、本研究が目指している統語的他動性システムの解明という課題に深く関わる問題である、文内の叙述関係や視点の問題に関しても考察を進め、その成果の一部を口頭発表のかたちでとりまとめることができた(「存在文と視点:内項主格NPの主語特性をめぐって」第16回現代日本語文法研究会、2020年3月)。この成果は、年度開始時点では予想していなかったものだが、残る3カ年の研究期間の方向性を決定づける重要なものとなると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究が取り組み実現しようとしている研究内容についての洞察・考察の作業は予想以上に進展したが、その成果がまだ口頭発表されたに留まっており、論文のかたちでは公表されていない部分があるため、全体的な進捗としては「概ね順調」という状況であると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
4カ年の研究期間がまずは順調にスタートしたことから、今後も本研究の研究実施計画に沿って研究を推進する。また、統語的他動性システムの上位システムとも言える文構造全体の統語的なシステムについての議論も推進する。 なお本研究は、統語的他動性と名詞の有生性の関係を重視しているが、この問題について議論を深めるため、名詞の有生性が格のシステムに直接反映される茨城県西地域方言についての聞き取り調査を実施すべく、下準備を開始していた。しかしこれは、COVID-19感染拡大の影響により断念せざるを得ないかもしれない。方言文法における有生性関連現象については、当面は先行研究が指摘してきた事実の再確認を行う。
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Causes of Carryover |
消耗品費として計上していた物品の購入を次年度に先送りした結果、残額が生じた。2020年において消耗品の購入のために使用する予定である。
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Research Products
(2 results)