2022 Fiscal Year Annual Research Report
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19K00626
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岸本 恵実 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 教授 (50324877)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | キリシタン / 羅葡日辞書 / 日葡辞書 / 宣教に伴う言語学 / イエズス会 / パリ外国宣教会 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度2021年度の成果のうち、キリシタン文献の、近代の日本およびフランスにおける受容について公刊したほか、新たに以下(1)~(4)の成果を口頭で発表した。 (1)キリシタン版『サントスのご作業』(1591)2巻において、「¶」「;」の用法と分布に偏りが見られる。とくに巻2冒頭の組版に試行的要素が強いことは、巻1より巻2が先に刊行されたという先行研究の説を補強する。(2)キリシタン信徒国字文書の外来語は、キリシタン版国字本と同様ひらがなで音写されるが、漢字表記が選択されるなど、非キリシタンによる国字資料との連続性が認められる。(3)カトリック日本再宣教に伴い、パリ外国宣教会のフェリクス・エヴラール(Felix Evrard)神父により著されたフランス語話者向日本語学習書『日本語教程』(1874)のテキストが、浮世草子『新鑑草』に基づく口語訳・仏訳であること、使用された日本語及び解説には、同時期のアストン、サトウらの英学会話書とは異なる独自の要素がみられることが判明した。(4)パリ外国宣教会宣教師団の琉球滞在のさい、19世紀半ばルイ・テオドール・フュレ(Louis-Theodore Furet)神父により書写されたとみられる百人一首仏訳が、百人一首欧文全訳のごく早い時期のものであることを確認した。 また、以下(5)の成果を執筆予定である。 (5)新出のキリシタン版、ユトレヒト大学本『さるばとるむんぢ』は、すでに知られていたカサナテンセ図書館本(1598)に先行するとみられる異版であるが、カサナテンセ本と同じくキリシタン用語集と漢字語集(字集)の二種類の語彙集が付されている。どちらも本文理解を補助する役割が認められるが、キリシタン用語集はゆるやかな意義分類体であり、ほぼ本文出現順の漢字語集と比べると補助的機能が小さく、本文と別に読むことが可能な基本用語集となっている。
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