2023 Fiscal Year Annual Research Report
室町後期・江戸初期に於ける地方成立古記録・古文書の記録語・記録語法の記述的研究
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19K00628
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
堀畑 正臣 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 名誉教授 (30199559)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 室町後期~江戸初期 / 記録語と記録語法 / 上杉家文書 / 断而(だんじて) / 稼・*(峠の山が手偏)・加世義・稼・かせぎ / 東国古文書用語 / 篇目(へんもく) / 九州の古文書特有の意味 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は『上杉家文書』の調査を行い、記録語や記録語法、古文書表現を集め、それらを他の地方成立の古文書や古記録と比較し、相違点と共通点を検討した。 『上杉家文書』では「此等旨断而可申届之由候」(199、倉俣実経外五名連署奉書、一巻204頁)のように「断而(だんじて)「必ず・きっと」の意」が7例見える。これは『伊達家文書』、『武家家法Ⅱ』「328 北条氏陣中法度写」、小和田哲男監修・鈴木正人編『戦国古文書用語辞典』「鑁阿寺文書」に各1例と見え、東国古文書用語であろう。小学館『日国大』では明治以降の用例をあげている。 また、「加世義4例・嘉世義1例」(勤めはげむこと)は表記が「稼・かせぎ・*(峠の山が手偏)」と種々だが、東国古文書類に見える表現である。「御家風」は『上杉家文書』では「一族の主立った者」の意で使用される。打消を伴う「毛頭」は全国の古文書に見えるが、早い例は『上杉家文書』の享禄3年(1530年12/7)の「致還往以来、毛頭無疎意候処」である。珍しい例として「彼牢人衆被官中野ニ相残候者共、露色候処」の「露色」1例があった。 他の地方古文書等と比較すると『相良家』『島津家』の文書や『上井覚兼日記』に見える「篇目(へんもく)」の「喧嘩やもめごと等の訴訟」の意での使用は、九州の古文書特有であろう。『伊達家文書』の「塩味」(塩は旧字体)、「面馳走」(見参の意)、『相良家文書』の形式名詞「番」「辻」「通」や「為仁躰(部将としての意)」等、地方の古文書に特徴的な語や語句が見える。 今後の忠節を依頼する表現として、畠山尚順「彌馳走頼入候」、北条氏綱「彌可勵戦功者也」、北条氏康「彌可走廻候」「彌可相(*かせぎ)候」、足利義教「彌(たのみの異体字)思食候」等があり、地域や人によって表現法が多彩である。「後で詳細に」という表現にも「委細~」「巨細~」「万端~」と人や地域で差異が見える。
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