2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K00637
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Research Institution | Shitennoji University |
Principal Investigator |
高橋 美奈子 四天王寺大学, 人文社会学部, 准教授 (20319768)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 直子 学習院大学, 文学部, 教授 (30251490)
高梨 信乃 関西大学, 外国語学部, 教授 (80263185)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 文法的類義表現 / 気づかれにくい / 文法カテゴリ / 命題 / モダリティ / 複文 / 非母語話者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は次の目的を持つ。文法現象を担う文法形式における類義表現(文法的類義表現)のうち、まだそれほど知られていない表現、あるいは類義であることが気づかれていない表現を抽出し、整理し、重要な類義表現に関しては精緻な記述を行い、日本語文法研究に新たな知見を加えること。また、その成果の日本語教育への応用も視野に入れること。 これらを踏まえ、2022年度については次を計画していた。①これまでに抽出した類義表現についてより精緻な記述を行うこと②非母語話者の産出データを分析して「気づかれにくい文法的類義表現」の抽出を行うこと③新たな非母語話者の産出データを得ること。 本年度の研究実績として次のことが挙げられる。2022年4月10日、5月8日、6月19日、7月18日、8月4日、8月9日、9月18日、10月31日、11月11日、11月14日、12月12日、2023年1月20日、2月10日、3月10日の計14回の研究会を実施し、メンバー間で研究成果を共有した。具体的には次の「気づかれにくい文法的類義表現」を取り上げ、記述すべき内容を検討した。:非母語話者にとっての「は」と「が」、可能性を表す類義表現、願望を表す類義表現、条件の類義表現、逆条件の類義表現、接続表現「てはじめて」と「てこそ」、「まちのぞみ」に関する類義表現「したい」と「しよう」。年度最後の研究会で外部の研究者による批評もいただけた。 研究成果の一部を「カナダ日本語教育振興会2022年度年次大会」や論文で発表したことにより、目的の一つ「日本語文法研究に新たな知見を加えること」の一端が達成された。 また非母語話者との比較対照の材料を得るべく、同じ課題を母語話者に与えてデータを採集した。そのほか、既に得た非母語話者の作文データについて、作文のテキスト化、評価基準の検討、一部の評価を行った。これらは日本語教育への応用を見据えてのことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」にも記したが、本年度は次のことを計画していた。①これまでに抽出した類義表現について、より精緻な記述を行う。②非母語話者の産出データを分析して「気づかれにくい文法的類義表現」の抽出を行う。③新たな非母語話者の産出データを得ることに取り組む。 実際には次のような成果が得られた。2022年4月10日、5月8日、6月19日、7月18日、8月4日、8月9日、9月18日、10月31日、11月11日、11月14日、12月12日、2023年1月20日、2月10日、3月10日の計14回の研究会を実施し、メンバー間でそれぞれの研究成果を共有し、また①にあたる記述の精緻化を進めた。具体的には次の「気づかれにくい文法的類義表現」が取り上げられた。:非母語話者にとっての「は」と「が」、可能性を表す類義表現、願望を表す類義表現、条件の類義表現、逆条件を表す類義表現、接続表現の「てはじめて」と「てこそ」、「まちのぞみ」に関する類義表現「したい」と「しよう」。本年度最後の研究会においては、これまでに取り上げた文法的類義表現の一部に造詣の深い外部の研究者からの批評を得て、内容の妥当性について検討することができた。研究成果の一部は「カナダ日本語教育振興会2022年度年次大会」での口頭発表とポスター発表、また論文でも発表し、研究目的の一つ「日本語文法研究に新たな知見を加えること」が一部達成できた。②③に関して、非母語話者の産出に見られる文法的類義表現と母語話者のそれらとを比較対照し、異同やそれぞれの特色を検討するために、同一課題についての母語話者による産出データを採取した。また、既に得ている非母語話者の産出データ(志望理由書作文)をテキスト化し、大学日本語教員が評価する際の基準を検討・試作し、一部について評価を行った。これらは研究目的の一つ、日本語教育への応用を想定して実施したものである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の課題は ①これまでに抽出した類義表現についてより精緻な記述を行うこと ②非母語話者の産出データを分析して「気づかれにくい文法的類義表現」の抽出を行うこと ③新たな非母語話者の産出データを得ること である。 ①については、これまで、命題領域・複文領域・モダリティ領域のいずれに関しても複数の文法的類義表現を取り上げて研究、記述してきた。その成果を、学会発表、あるいは論文の形で発表することで、研究目的の一つである「日本語文法研究に新たな知見を加えること」が一部達成できたが、さらにこれに取り組み続ける。論文発表の見通しがあり、また学会発表も検討している。 ③については、さらに拡充し、書き言葉のデータとしては、新たなテーマに関する非母語話者の作文、話し言葉のデータとしては、非母語話者によるアカデミックな口頭発表の音声のデータを収集することを計画している。これらのデータは②に活用する。また、既に得ている作文と同一テーマの、母語話者による作文データも収集ずみなので、非母語話者と母語話者それぞれの産出を比較対照して、それぞれに現れる文法的類義表現を研究する。 また、すでに得ている「志望理由書作文」のテキストデータ化が完了し、本研究で作成した評価基準を用いて日本語教員数名に評価をしてもらっているが、さらに評価者を増やして評価を得る計画である。そして、それらの評価と作文テキストデータとを合わせてオンライン上で公開し、日本語教育分野における研究の材料として提供することをめざす。これらは「大学日本語教員に評価される日本語力」や「その獲得のために必要な教育内容」といった事柄の研究への活用が見込まれる。 そのほか、③として収集する各種データについても、整備した上で将来的には公開することをめざす。これらにより、本研究の目的のもう一方である「研究の成果を日本語教育に応用すること」が達成されることになる。
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Causes of Carryover |
2022年度にはコロナ禍による諸規制や制約が緩和されることを想定し、海外学会用の旅費を計上していたが、結局は対面形式ではなくオンライン開催であったため、そのための支出がなかった。また、物品費と人件費・謝金についても、想定ほどの支出がなかった。これらにより、全体の支出が予定よりも少なく終わり、次年度使用額が発生した。 次年度の使用計画は次の通りである。2023年度は対面形式での学会開催が復活することに伴い、旅費の使用が見込まれる。また、データ収集に伴う謝金、データの入力や公開作業に必要となる人件費にも使用する。
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Research Products
(7 results)