2019 Fiscal Year Research-status Report
A quantitative study of functional load in Japanese phonology
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19K00644
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
竹村 亜紀子 神戸大学, 人文学研究科, 人文学研究科研究員 (50597309)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 機能負担量 / 情報理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、現代日本語(標準日本語、近畿方言)の音韻体系にある様々な音韻の対立について、機能負担量という概念に基づいてその重要度を明らかにし、音韻の変化および不変性についての体系的な説明を試みることである。機能負担量とはある音韻対立が語彙を弁別する度合いである。対立は語彙を弁別するための情報であり、音韻変化理論では、機能負担量が高い音の組み合わせほど対立が顕著で変化しにくく、そうでない場合は対立が消失しやすいと言われている。本研究では大規模な日本語語彙コーパスと情報理論を用いて計量的に音韻対立の相対的な重要度を比較する。そして、機能負担量という観点から音韻変化がなぜ起こるのかという問題に対して体系的な説明を行う。 本研究は標準日本語と近畿方言を対象に(1)コーパスからのデータの抽出・整理、(2)情報量と機能負担量の算出、(3)比較・検定、(4)考察、(5)研究成果の公表という5つの段階を踏む。2019年度は(1)標準日本語データの抽出・整理のために3つのコーパスから約7000語とその頻度情報を抽出し、さらに約3000語を手作業で入力し約1万語の語彙データを構築した。(2)構築した語彙データを使い、語彙特性の把握や機能負担量の算出は終わった。日本語の語彙特性として以下のことが明になった。(a)単語長という観点からみると、4モーラ語が圧倒的に多く、(b)アクセントの観点からは平板型が多く、(c)語種の観点からは圧倒的に漢語が多く、続いて和語、外来語という構成になっている点が明らかになった。アクセントの機能負担量、母音の長短の機能負担量、各子音の機能負担量なと算出できたが、それぞれの要素間での比較・検定はこれからである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究でコーパスから抽出した1万語の語彙データを構築することは本研究の結果の信頼性を高める上で重要である。その1万語の語彙データのうち約7000語はコーパスから抽出できていたが、残りの約3000語を入力および確認に時間がかかってしまった。その後、構築したデータを使い、日本語の語彙特性の把握、および機能負担量の算出まではできたが、各要素間(例:各子音、各母音、アクセント、母音の長短、促音の有無など)の比較・検定をこれから行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
構築した語彙データを使い機能負担量の算出は終わったが、再標本化および比較・検定が終わっていないため、これを急務とする。この比較・検定が終わってから、適切な学会に応募して研究成果を発表したいと考えている。また、2020年度はできるだけ早い段階で、上記の再標本化および検定と同時に近畿方言のデータを抽出して、同様に機能負担量の算出をしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
1万語の語彙データ構築のために、残りの3000語を手作業で入力するための人件費を申請していたが、申請者自身が一人で行ったため人件費を支出することがなかったためである。今後、近畿方言の語彙データベースを構築する際に必要があれば人件費として使用するつもりである。 また、新型コロナウイルスの感染拡大により学会の開催がなかったため旅費としての支出もなかった。新型コロナウイルスが終息するかどうかにもよるが、今後新たに学会等が開催されるのであれば参加したいと考えている。
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