2019 Fiscal Year Research-status Report
古代日本語における表記体と表記環境にみる<萬葉仮名>と<仮名>との相関
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19K00645
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
尾山 慎 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (20535116)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐野 宏 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (50352224)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 文字 / 表記 / 万葉仮名 / 表記体 |
Outline of Annual Research Achievements |
今期は、上代の表記体をめぐる先行研究を批判的に見直し、<表語用法専用><表音用法専用><両者混交>の三つにまとめられることを指摘した。~体という限り対立するスタイルの違いであり、複数認められる必要がある。よって、「表記体」とは「表記のスタイル」である、とだけするのでは、定義になっていない。この三分類は平仮名片仮名成立以降の議論にも利用可能であって、上代のみならず、通史的にも意味を持つ。また、換言すればこれ以上、まとめ上げても意味を成さず、日本語表記の表記体は、この鼎立が今後、様々なことを考えるキーになる。以上のことは、表記研究会(於清泉女子大学 2020.1.25)で口頭発表した。研究者間で術語にズレがある点は否めない。よって、少なくとも自らの中でぶれないで統一的に使うことが重要であろうと思う。この点、本発表を通して一つの指針を示すことができたと考える。 また、表記を巡って読み手と書き手を想定し、それぞれが唯一無二の言葉をそこから取り出すのでは無く、書き手は書き手の文章(X)、読み手は読み手の文章(Y)が措定され、二つを理論上別物とすることで、表記と言葉の関係はより明確になり、過去の表記と言葉を巡る論争の経緯もクリアになった。特に、上代は文章が未発達だったとされる指摘がある一方、訓点資料等の成果を動員し、その読み(テクスト)を充実化させる動きがある。ある種、上代の文章を巡って二重の位置づけがが起きているのである。これも、代表舎がとなえる、XとYという弁別を以てみれば、議論の構造がよく分かる。 以上大きく分けて二つのテーマ、特に理論的なことに寄せた論考が多くなったが、これらが今期の成果である。上記いずれも口頭発表、論文化をしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
表記体の理論的研究を中心に、概ね順調である。2020年1月25日には「上代表記体論」として表記研究会で口頭発表も行った。また、読み手、書き手、分析者の三者にあって、文字表記とことばの関係はいかに得られるかということを巡っては、美夫君志会全国大会にて発表(2019年7月7日於中京大学)、さらにこれを論文化して発表した(「上代の文章・文体・表記再考」『美夫君志』100号 2020年3月刊行)。研究の進展および、その成果発表という点においても、概ね順調とみてよい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度理論化したことを引き続き推進し、議論を深め、研究の進展に努める。 あらたに吉岡真由美氏に分担者に加わってもらい、訓仮名をはじめとする、仮名・訓字の総合上代漢字データベースの作成にも努める。今年度に限らないことではあるが、理論的研究、実例調査、データベースの充実化という三本柱で行っていくのが基本方針である。1年目は理論的研究が勝っている状態であったので、2年目は実例検証とデータベースの充実化のほうに努めていきたいと思う。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス感染拡大により、研究会が2件中止になり、旅費や資料準備(印刷、発送等)のために残して措いた額を使わないことになったため。
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Research Products
(6 results)