2021 Fiscal Year Research-status Report
言語バリエーションとしての方言文法の多様性を生む社会的・語用論的な要請の解明
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19K00646
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
又吉 里美 岡山大学, 教育学域, 准教授 (60513364)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堤 良一 岡山大学, 社会文化科学学域, 准教授 (80325068)
松丸 真大 滋賀大学, 教育学部, 教授 (30379218)
白田 理人 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (60773306)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 方言 / 文法 / 関西方言 / 琉球方言 / 対照研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、社会のあり方のうち、言語の、特に文法形式に影響を及ぼすものを「語用論的な要請」と定義し、どのような「語用論的な要請」が、どのような文法形式に影響を与えうるかを解明することである。特に、本研究では社会のあり方に関わるダイクシス表現に注目して、複数の、従来は個別に扱われていた言語形式において表現差が生じる背景に共通の「語用論的な要請」が関わることを、関西方言と琉球方言を対照して、両方言間の差異を明らかにするべく調査・研究を進めることを当初の研究の目的としていた。しかし、covid19の影響によって、臨地調査が行えずにいる。令和3(2021)年度は、指示詞を中心にダイクシス表現について、各人がこれまでに収集した調査データやオンライン調査による補充調査を実施し、データ整理をおこなった。具体的な研究実績の内容については下記のとおりである。
白田(2021)は、北琉球奄美喜界島方言の人称代名詞と指示詞における形態および機能についての研究発表である。堤(2022.著書)、堤(2022.論文)は、現場指示用法あるいは文脈照応用法の例外的存在として扱われてきた一連のソ系(列)指示詞について「基準指示用法」であることを提案し、「基準指示用法」は、何らかの対象を、心内の基準と照合するということを明らかにした。又吉(2022)は、津堅方言の文法記述の項目として指示詞の現場指示用法における形態と機能について記述した。また、又吉(2022)では、指示詞の言語資料として、民話の翻訳テキストを作成した。松丸(2022.著書)では、他動詞文の主語と目的語の区別について、京都市方言と宮城県登米町方言を対照して分析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
covid19の影響によって、臨地調査が行えず、全体的に調査・研究が遅れている。本研究が研究対象とするダイクシス表現については、場面や状況に依存するので、対面調査や臨地調査が望ましい。しかし、令和3(2021)年度においても、複数回にわたって緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置の敷かれ、対面での調査が制限された。以上の理由により、調査・研究が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題における今後の推進方策は以下のとおりである。 1)ダイクシス表現に関する項目について、指示詞以外の文法項目の調査対象の選定を行い、調査・研究を進める。 2)各方言における指示詞および指示詞以外のダイクシス表現について、体系的な記述研究、理論的な研究について発表するとともに論文としてまとめる。 3)ダイクシス表現について関西方言と琉球方言とを対照し、ダイクシス表現における両方言間の差異を見出すとともに記述研究発表および論文としてまとめる。
ただし、今年度もcovid19の影響が続くと予想される。調査研究が制限される中で下記の工夫を考えていく。①調査遂行に関して、遠隔での調査やオンラインでの調査の方法や構築を検討し、実施する。②既存のデータや談話資料などのデータおよび資料を活用しながら研究を遂行する。③オンラインでの研究活動を積極的に行い、できるかぎり研究を進められるように努める。
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Causes of Carryover |
covid19の影響により、予定していた臨地調査が実施できなかったため。
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