2019 Fiscal Year Research-status Report
Basic research for construction and release of Sino-Japanese and Sino-Japanese word database across pre-modern Japanese works
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19K00650
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Research Institution | Atomi University |
Principal Investigator |
加藤 大鶴 跡見学園女子大学, 文学部, 准教授 (20318728)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 勇 広島大学, 教育学研究科, 教授 (50215711)
石山 裕慈 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (70552884)
高田 智和 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 言語変化研究領域, 准教授 (90415612)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 漢字音 / 漢語音 / 音韻史 / 位相 / データベース |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、(1)漢文直読・訓読資料、和化漢文資料、和文資料など文献資料の位相差が生み出す漢字音・漢語音の多様性、(2)臨時的な造語力に富む漢字―漢語の関係に着目することで、(3)中国語原音およびそれを受容した日本語社会における平安・鎌倉期から近世期までの字音・漢語音韻史を総合的に明らかにし、その基礎的な学術的課題を浮き上がらせようとする。またこの3点を研究上の目的として、漢字音・漢語音を網羅的に観察するための巨大なデータベースを新たに構築しようとするものである。 今年度は2回の研究会議を開催し、データベース構築に用いる36種の文献資料の諸本関係とその位相的性格を再検証したうえで、各データの共有様式(資料番号、資料内漢字番号、資料内漢語番号、単字、漢語、単語内位置、単字長さ、声点、声点型、仮名注、仮名型、反切注、類音注、その他の注、出現位置、備考)を決定した。初年度にデータベースとして準備できた資料は、次の通りである。 (1) 文直読・訓読資料:根津本『大般若経』、親鸞『阿弥陀経・觀無量壽経』、金沢文庫本『群書治要』経部、半井家本・仁和寺本『医心方』 (2) 和化漢文資料:早大・真福寺・東大本『尾張国郡司百姓等解文』 (3) 古辞書・和文資料:前田本『色葉字類抄』、『三帖和讃』 またここまでに構築したDBの試験的運用を通じて、分析の分担に応じた漢字音・漢語音に関わる基礎的な学術上の課題を抽出し、本格的な分析の準備を整えたほか、研究発表に記すような研究成果も得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究者がそれぞれ所持している入力データは研究者自身の分析を目的とした形式に特化されており、データによってはそれを共通の形にする際に原資料をすべて見直す必要があるものがあることが分かった。そのため予定していた全ての資料をデータベース化できているわけではない。現状では、データの見直しが着実に終えられているものから、データベース化している。
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Strategy for Future Research Activity |
継続して新たな調査によってデータを加えつつ、DBの調整を進め、年度前半にはDBに格納するデータの骨子を完成させることを目指す。年度後半は、各分析テーマの研究を進める。「漢語音韻史」では平安・鎌倉期から南北朝時代を経て、近世期までの漢語の変遷を主として声調・アクセントの面で素描する。「位相差と漢字漢語音」では文献の資料的位相と漢字・漢語音の関係と、その史的変遷を整理する。「漢字音と漢語音の関係」ではDBによって横断的に閲覧可能となった漢語音と韻書や字書・辞書資料との関係を整理する。またこれらの一部を学会等で報告する。
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Causes of Carryover |
既入力データをデータベース用のデータに整形していくにあたって、データの検証や形式の調整等においてはアルバイトに依頼を行う予定であった。しかしながら共通の入力形式を会議を経て構想していくなかで、既入力のデータを、予想外の分量について原資料に当たり直す必要が出てきた。これは研究者自身でなければできない作業であるが、この作業を終えない限りアルバイトに次のプロセスを渡すことができない。したがって、全体の作業が遅れ、結果として人件費の使用が滞った。次年度は人件費への傾斜が大きくなるので、順調に予算が使用される見込みである。
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