2020 Fiscal Year Research-status Report
部分関係の種類と表現形式の対応関係に関する日英対照研究
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19K00658
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
田中 秀毅 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (50341186)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 部分構造 / タイプ・トークンの関係 / タイプ化 / カテゴリー / 修辞疑問 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は部分構造A of Bが表すタイプ・トークンの関係について考察した。次のAとBの対話に生じているone of themはAの発話に含まれるa cute catをタイプ化(抽象化)した個体の集合を表すと考えられる。A: You have a cute cat. B: I will buy another one of them soon. 興味深いことに、それがかわいい猫の集合(cute cats)ではなく、品種が同じ猫の集合(cats of the same breed)と解釈される。この事実は、タイプ化において、目標となるカテゴリーの種類に少なくとも2つの区別(客観的なカテゴリーと主観的なカテゴリー)があることを示している。 主観的カテゴリーと客観的カテゴリーが一定の関係をもつことが、次の対話によって裏づけられる。A: What kind of teacher is she? B1: She is a teacher of English.B2: She is a kind teacher. B1は客観的カテゴリーに基づいた回答に相当し、B2は主観的なカテゴリーに基づいた回答に相当する。当該疑問文で個体間の差を問えるのは、客観的カテゴリーの区別には一定の主観的カテゴリーの共有性が担保されるためだと思われる。その証拠に、What kind of teacher IS she?のようにISに強勢をおいて発話されると、客観的な観点(教員免許状など)では教員とみなせるかもしれないが、主観的な観点(倫理性など)においては教員とみなせないといった修辞疑問文の解釈になる。 このように、What kind of構文では客観的カテゴリーと主観的カテゴリーの両面を問えるのに、one of themは前者だけに焦点があたるのはなぜなのか解明する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍により、インフォーマント調査の頻度が少なくなってしまったため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果は次年度中に発表できるように、前半に集中的に必要なインフォーマント調査を実施する。なお、令和3年度の研究課題は日本語を考察対象にする予定なので、自分の言語直感に基づいて研究を進めることにより、前半のインフォーマント調査の継続による影響は十分に抑えられる見通しをもっている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により学会出張が皆無となった。参加できた学会や研究会はオンラインで開催されたものしかなかった。また、インフォーマント調査の頻度が少なくなったため、以前の調査結果を利用して研究を進めたことによりそのための予算の使用がなかった。 次年度は本年度の研究課題(考察対象が英語)に必要なインフォーマント調査のために謝金を使用する。また、国内外での研究発表については次年度の見通しが立っていない状況であるが、学会出張の機会が制限され旅費の予算に余剰が生じた場合には論文投稿の準備に必要となる英文校閲のための費用や投稿料に充てる予定である。
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