2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K00661
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡辺 秀樹 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 教授 (30191787)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大森 文子 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 教授 (70213866)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 英詩 / 歴史的系譜 / 音韻効果 / 擬人化 / Beowulf / Shakespeare / Sonnets / メタファー |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度もコロナ感染の影響で海外・国内出張ができず、研究代表者は英詩レトリックについての大学院講義と連動させて古英詩Beowulfと近代期Shakespeareの詩の研究に集中した。Beowulfについては40年の研究と学会発表の内容をまとめる形で本詩中にみられる感嘆要約表現 "That was good king!" 型の全用例を文脈から再考、"that was modig secg" (1812) について、定説の「詩人のBeowulfの称揚」とは異なる「Beowulfの発言引用の末尾で剣への誉め言葉」という新解釈を提示する英文論文を発表した。これは国際的に認知されている中世英語研究者のみが執筆依頼を受けた専門性の高い英文論文集に収録された。 Shakespeareについては長詩The Rape of LucreceとSonnetsの中から名詞timeが現れる箇所と篇を集めて比較再考し、研究代表者の強みである歴史的資料分析を行い、16-17世紀の英詩詞華集や詩論の記述を議論の出発点とし、周知の、擬人化された時(時の翁)の「若さ・美・名声の破壊者」に加え「縺れた事情の解決者・和解の導き手」という役割からも詩を書いていることを示した。研究分担者もShakespeareの戯曲とSonnetsに見られるレトリックの諸相を大学院講義で論じながら用例を収集し、代表者と相補的にTime「時」のメタファーについての考察を行い、従来の二方向説「人は時の中を進む」「時は人に向かって流れ来る」というメタファー表現群に加えて「時は人と共に進む」の表現群が存在することがShakespeareの独自性であると論じた。 以上のように、同部局の英語史専門、認知言語学専門研究者の英詩のメタファー共同研究で、頻繁な研究会合・専門的知見供与・講義との連動により、豊富な用例収集と新解釈の提示に結び付いた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、昨年度に引き続き新型コロナウイルス感染状況が改善されず、研究代表者は予定していた資料収集のための英国図書館への海外出張ができなかった。また、授業が遠隔体制となったためにその実施に要するエフォートが大幅に拡大したことに加え、今年度12月以降には所属大学を移るための業務に多大な時間を費やすことになり、研究に充てるべき時間と労力が大幅にそがれた。分担者も、英詩に関する資料収集や、メタファーデータ収集・分析の方法論について討議するための予定されていた他大学訪問などの国内出張ができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度は代表者の所属大学が変わったため、例年行って来た7月か9月の英国出張はできないが、これを年度末に行いたい。英詩の研究対象を広げて、ルネッサンス期から19世紀までの名作を対象にレトリック分析を行った結果を和文論文に仕上げる。2022年4月現在、新型コロナウイルスの感染状況は改善されず、研究分担者は昨年度に引き続きほとんどの授業をオンライン形式で実施しており、研究に支障をきたすことが懸念されるが、できる限り工夫し、代表者との毎月2‐3度の研究会合を持ち、共同研究を遂行するよう努力する。 研究業績概要でも述べたが、特にShakespeareのメタファーの分析において本共同研究では、見逃されてきた点や新たな解釈を提示してきた。共同研究の成果として、これらをまとめて再考編集した英詩レトリック論を出版したい。
|
Causes of Carryover |
今年度も新型コロナウイルス感染蔓延が続き、計画していた資料収集・編集作業のための英国出張や研究会、他大学訪問、学会出張ができなかった。また、授業が遠隔体制になったため、Shakespeare校訂注釈全集の購入にのみ科研費を使い、その他は未使用となった。今年度は所属大学が変わり7月と9月には海外出張は不可能であるが、コロナが収まったら年度末に、研究資料収集のための国内出張と英国図書館への短期出張を実施したい。本研究課題の研究期間も延長したいと考えている。
|
Research Products
(3 results)