2022 Fiscal Year Research-status Report
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19K00661
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
渡辺 秀樹 関西外国語大学, 外国語学部, 教授 (30191787)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大森 文子 大阪大学, 大学院人文学研究科(言語文化学専攻), 教授 (70213866)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | shakespeare / Sonnets / 動物名メタファー / 擬人化 / 繰り返し / 列挙 / 翻訳 / ルネッサンス |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度はShakespeareの作品を対象とし、研究代表者と分担者で〈時〉のメタファーをテーマとする共同研究を行った。代表者はShakespeareと同時代の詞華集に見られるtimeの形容辞に着目、この詩人が伝統的措辞とレトリックを使用しながらも独創性を発揮していることを、Sonnets、長詩Venus and Adonis, 戯曲Twelfth Nightにおける擬人化された〈時〉の複数イメージと〈時〉への呼びかけについて考察した。続いて戯曲Hamletにおける動物名のメタファーを再考し、Hamlet研究書や校訂本において言及のない動物名について指摘、本作品中の動物名の繰り返しが意図的であること、「雲の場」におけるweasel, camel, whaleのメタファー義の新解釈を提示した。10種の日本語訳作品を比較することにより、日本語への翻訳によって失われるメタファー義の問題も指摘した。分担者も「時のメタファー」をテーマとし、As You Like It とSonnetsに描かれた〈時〉と人との関わりを表す比喩表現を観察、従来の認知メタファー論の見解では捉えきれなかったShakespeare独特の時間認識およびその認識を構成するメタファーの構造について考察した。詩人が〈時の翁〉という文化モデルをどのように扱っているか、これに注目し、Sonnetsに表された〈時〉のメタファーが、人間にとって理不尽で無慈悲で手に負えない存在としての〈時〉の性質とともに〈時〉の不可逆性をも反映するものであることを論じた。またSonnets全154編中、特に美青年への愛を描いた1~126番までの詩群を対象にした論文では、〈時〉との関わりの中での詩人の青年に対する認識のしかたと愛情について、人間を〈植物〉として理解するメタファーの観点から考察し、詩に明示されない隠されたレトリックを考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度も引き続き新型コロナウイルス感染状況が大幅には改善されず、英詩に関する資料収集や、国内の学会出張ができなかった。研究代表者は4月に新たな所属大学に移り、研究環境の整備に時間がかかり、新勤務先での運営業務遂行等で研究に充てるべき時間と労力がそがれた。以前の科研費研究で毎年7月か9月に行ってきた資料収集と国際学会発表のための英国出張は、コロナのためだけでなく、7月と9月が講義期間となったため、できなかった。研究分担者は、対面形式と遠隔形式の両方を取り入れた授業実施に要するエフォートが大きかったことに加え、所属部局の改組の影響で学内運営業務が大幅に増えて、それに多大な時間を費やすことになった。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、引き続きShakespeareの詩作品を中心に19世紀までの英詩を対象とし、詩における動物表象と動物名のメタファー義について考察を深める予定である。昨年度は所属大学を移し、研究環境に慣れるのに時間がかかった。予定している英国での研究資料収集活動は、新型コロナウイルスの影響のみならず、勤務先移転に伴う業務スケジュールの大幅変更により、計画が立てにくい状況になっているが、できる限り工夫して研究を遂行するよう努力する。研究分担者との連絡をより密にして、研究会での発表や論文作成、研究書出版へ向けての編集作業に専念したい。
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Causes of Carryover |
2022年度も引き続き新型コロナウイルス感染状況が大幅には改善されず、英詩に関する資料収集や、国内の学会出張ができなかった。研究代表者は4月に新たな所属大学に移り、研究環境の整備に時間がかかり、新勤務先での運営業務遂行等で研究に充てるべき時間と労力がそがれた。以前の科研費研究で毎年7月か9月に行ってきた資料収集と国際学会発表のための英国出張は、コロナのためだけでなく、7月と9月が講義期間となったため、できなかった。研究分担者は、対面形式と遠隔形式の両方を取り入れた授業実施に要するエフォートが大きかったことに加え、所属部局の改組の影響で学内運営業務が大幅に増えて、それに多大な時間を費やすことになった。以上の理由で使用額が少なくなった。 2023年度は共同研究者数名の所属大学を訪問して議論を行い、研究会と学会活動に積極的に参加する。
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Research Products
(2 results)