2019 Fiscal Year Research-status Report
A Contrastive Phonological Analysis of Marginal Word-formation Processes in Japanese and English
| Project/Area Number |
19K00663
|
|---|
| Research Institution | Yamaguchi University |
|---|
Principal Investigator |
太田 聡 山口大学, 人文学部, 教授 (40194162)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
| Keywords | 複合語 / アクセント / 略語 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、日本語の例外的・非標準的なアクセントパターンを説明するために、統語論の分野で用いられてきた構成素統御(c-command)（以下、c統御）という概念を用いた分析を行い、論文にまとめた。例えば、（アクセントの位置を↓で示せば、）「オンシツコ↓ーカ（温室効果）」、「オンシツコーカガ↓ス（温室効果ガス）」のように、通常、複合語のアクセントは後半もしくは最終要素に与えられる。ところが、「キュ↓ーシューコーギョーダ↓イガク（九州工業大学）」などではアクセントが2か所に分散して現れる。こうした一見例外的なアクセントパターンに関して、従来の研究では、[X [Y Z]]のように後半にまとまりがある（樹形図的に言えば「右枝分かれ構造」になっている）場合には、通常のアクセント規則に従わないことが多いと指摘されてきた。しかしながら、c統御という概念・仕組みを用いれば、「温室効果ガス」であれば「ガス」が「温室効果」全体をc統御するが、「九州工業大学」では、「大学」が「工業」しかc統御できず、結果として、「九州」の部分は独立してアクセントを持つ、といった説明が可能になる。さらに、英語の、例えばuniversity car-park inspectorのような少々複雑な複合語のアクセントパターンも、同じくc統御によって容易に説明ができることを示した。
また、論文として発表するには至っていないが、例えば、「イラストレーション → イラスト」のような略語の形を決定するもっとも重要な基準はアクセントの位置であるという予測を立て、それを論証するために、無意味語を用いたテストを実施した。100名以上の学生たちに協力してもらい、データは集めることができたので、あとはその結果を詳しく分析して、論文にまとめることにする。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度まで取り組んでいた複合語のアクセントに関する論文の学会誌への掲載が諸事情で遅れたため、令和元年度に予定していた略語と混成語の分析への取り掛かりも遅れてしまった。
|
| Strategy for Future Research Activity |
令和2年度中には、略語形成に関する考察を論文にまとめて発表する。また、混成語に関する日英語のデータの統計分析も開始する。
|
| Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、年度末に予定されていた学会が中止となり、出張旅費で使い切る予定であった分が未使用となった。そこで、急遽物品購入をしたが、残額が少し出てしまった。コロナ禍が収束すれば、学会・研究会にできるだけ多く参加して、旅費として令和2年度の予算と合わせ使用したい。それが難しいようであれば、論文校閲費や研究成果の出版費の一部として使用したい。
|
