2022 Fiscal Year Research-status Report
A Contrastive Phonological Analysis of Marginal Word-formation Processes in Japanese and English
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19K00663
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
太田 聡 山口大学, 人文学部, 教授 (40194162)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 略語 / 愛称語 / フット |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、前年度に引き続き、日英語の略語形成についての研究を音韻的な面に注目しながら行った。英語の普通名詞の略語は、例えば、pamphlet → pamphのように最初の1音節を取り出すか、'infor'mation → infoのように、1語の中に複数の強勢(stress)がある語――強勢のある音節の前に'を付した――が元になっている場合には、強勢のある音節とない音節を組み合わせた2音節分を取り出すことが多い。なお、英語の韻律論では、強勢のある音節とない音節が組み合わさった単位はフット(foot)と呼ばれるので、infoのような略語は、1つのフットを取り出した例と見なすことができる。そして、いわゆる愛称(すなわちニックネーム)の形成も一種の略語形成であるが、英語の愛称の形成は、普通名詞の略語形成と同じ方式に則っていることがわかる。例えば、Michaelのように1箇所にしか強勢がない名前の愛称では、Mick, Mikeのように1音節が取り出されるが、'Alex'anderのように複数の強勢を持つ名前の場合には、そこから強勢音節と無強勢音節の2音節分(すなわち1フット)を取り出したAlec(k), Alexなどが愛称となる。一方、日本語の愛称は、例えば「恵(めぐみ) → メグちゃん」のように、元となる名前から2モーラ(=2拍)を取り出すことが圧倒的に多い。日本語は、英語のような強勢アクセントの言語ではないので、フットを強勢に基づいて定義できないが、日本語音韻論においては、「1フットは2モーラから成る」ということが広く認められている。したがって、日英語の略語・愛称形成を比較すると、日本語では、英語のpamphやMickのように子音で終わる1音節略語を用いることができないという違いがあるが、「1つのフットを略語の単位として用いることが多い」という共通性があることを指摘できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
略語に関する研究は十分に行えたが、並行して行う予定であった混成語に関する分析が計画したようには進まなかった。また、コロナ禍の影響が依然残り、研究打ち合わせや学会参加・発表を計画通りに行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
まだ十分に取り組めていない混成語のデータ収集および統計分析を行った上で、これまでの語形成に関する研究成果をまとめ、書籍として出版する計画である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染がいまだ続き、出張(特に海外出張)が全くできなかったため、旅費が未使用となった。また、計画していた被験者を募っての実験とそのデータ分析もできなかったため、人件費・謝金も未使用となった。令和5年度は、ようやく可能となった海外出張を行う予定である。また、物品費と人件費・謝金を計画的に執行するようにする。
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Research Products
(1 results)