2022 Fiscal Year Annual Research Report
不定詞節の発達とその生起環境の関係に関する通時的研究
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19K00670
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
中川 直志 中京大学, 国際学部, 教授 (70321015)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 統語論 / 生成文法 / 英語史 / 不定詞節 / tough構文 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度においては前年度までの調査を踏まえ、先行研究をさらに分析するとともに、現代英語のtough構文をその歴史的発達過程の中でどのように位置づけるべきか考察した。 近年、極小主義理論の進展に伴って、tough構文の研究が再び活性化している。それらは主に、「素性による駆動(Rezac (2006), Hicks (2009, 2017), Obata and Epstein (2012), Longenbaugh (2017) 、等)」や「ラベル付けアルゴリズム(田中 (2022)、等)」といった、移動に対する新しい考え方をtough構文の分析にいかに応用できるかを示唆するものである。しかしそれらの中には、tough構文の「現状」を(有り体に言えば)「完成形」と捉え、現状が内包する様々な矛盾を一つの分析に包括しようとした結果、分析そのものだけでなく、それを許容する理論的な仕組みまでも複雑化しているケースが散見される。 これに対し、本研究の調査結果を踏まえ、現代英語のtough構文が歴史的発達の過程にあり、それゆえに理論的には相矛盾する特性を示すと考えることもできよう。現代英語のあらゆる側面がシステムとして完成されていると考える必要はなく、むしろ、相矛盾する分析が適用可能であることを歴史の過程として受け止め、矛盾が許容される理由や許容範囲について分析することも現実的に有益なのではないかと考えられる。今後はこのような方向性についても考察したい。その意味からも千葉(2019)の研究は示唆的であり、その分析結果を『近代英語研究』第38号に書評として公表した。
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