2022 Fiscal Year Research-status Report
証拠性(evidentiality)から見る日英語比較統語論
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19K00671
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Research Institution | Nagoya Gakuin University |
Principal Investigator |
赤楚 治之 名古屋学院大学, 外国語学部, 教授 (40212401)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生成文法 / 認知言語学 / CP領域 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主目的は、日英語における証拠性と統語構造の関係を明らかにするものである。両者が関係する現象としては、2019年度の研究で、日本語の数量詞遊離現象に着目し、分析を試みた。それ以降は、談話領域とのインターフェースと考えられているCP構造の研究と、(統語構造の精緻化に取り組んできた)生成文法と(「捉え方」の研究を推進してきた)認知言語学の結びつきに関心が推移してきている。(これは、証拠性が統語構造に関与すると考えられる言語現象を発掘することに手間取っているという実態がある。)22年度は、第三要因の探究に向かって研究がおこなわれている現在の生成文法と用法基盤アプローチ(usage-based approach)の手法で多岐にわたる言語現象を捉えようとする認知言語学の間に見られる「方法論における批判の繰り返し」や「無関心」を避けるための提案を論文にした。現代言語理論において重要な立場にあるこれらの二つのアプローチが相互批判と無視を繰り返す状況は、言語研究にとって好ましい状況とは言えない。もちろん安易な妥協は科学にとっては禁物であるが、それぞれの研究により明らかになった成果や発見を可能な限り共有し、2つが協働できる「接点」を見つける努力をすることが重要であると考えられる。(なお、本研究の目的のひとつに、これらの2つの研究が積み重ねてきた知見を組み合わせることを挙げている。)2022年度は、That-trace効果と呼ばれている現象を取り上げて、二つのアプローチで扱う場合に生じる問題点を明らかにする研究を行った。加えて、「閉塞感」があるとしばしば指摘を受ける現在の生成文法(ミニマリストプログラム)の今後のあり方についても考察を行い、(第三要因の探究も含めた)今後の生成文法の展開の可能性ついて口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初考えていた計画どおりにできていない理由は新コロナウイルス感染症の影響で国内外での研究が実施できなかったこともあるが、それよりも、当初考えていた証拠性と統語論との関係を十分にあぶりだせる現象を発掘することができていないためである。証拠性が命題部の統語現象に影響を与える現象としては今のところ数量詞遊離現象だけであることから、それ以外を見つける必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
証拠性がかかわる統語現象の発掘を継続するとともに、認知言語学(特に構文文法)と生成文法の関係をさらに探っていく研究を続けていく。
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Causes of Carryover |
22年度は国外での研究発表ができず、所属大学の個人研究費で図書購入などができたため使用しなかった。次年年度の使用計画としては、現在のところ2回の国際学会での発表、並びに2回の国内での研究発表を計画している。旅費以外の経費は研究図書にあてる予定である。
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