2019 Fiscal Year Research-status Report
英語の不定冠詞と関連構文の発達に関する実証的・理論的研究
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19K00673
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
茨木 正志郎 関西学院大学, 人間福祉学部, 准教授 (30647045)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 後置属格 / 二重決定詞 / 不定冠詞 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、不定冠詞と所有代名詞から成る二重決定詞(例:a(n) his book)と呼ばれる構文の消失と後置属格と呼ばれる構文(a book of his)の出現について、調査・分析を行った。Heltveit (1969)やFischer (1992)などの先行研究によれば、二重決定詞において不定冠詞と所有代名詞が同一名詞句内で共起できなくなったため、hisが名詞の後ろに置かれるようになり、名詞とhisの間にofが挿入され、後置属格が出現したと言われている。 二重決定詞と後置属格の歴史的分布の関係について、史的コーパスYCOE, PPCME2, PPCEME, PPCMBEを用いて調査を行い、2つの構文の消失と出現には有意な相関関係があることを示した。つまり、中英語初期に二重決定詞が消失した後に、後置属格が出現し始めていることを明らかにした。 次に、後置属格の発達のメカニズムの要因について分析を行った。具体的には、不定冠詞は中英語以前は数詞として構造的にD(eterminer)P(hrase)(限定詞句)よりも低い位置を占めていたが、後期中英語以降、D主要部を占める要素へ文法化したと仮定し、同じくD主要部を占める要素へ発達した所有代名詞(Ibaraki (2009))と競合するようになったため、両者は名詞前位位置で共起できなくなったと主張した。 これらの研究成果の一部は、日本英文学会中部支部大会のシンポジウムで報告を行い、学術雑誌の近代英語研究に掲載が決定している。今後は、より不定冠詞の発達に焦点を当てて、コーパス調査・分析をおこなっていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は本研究課題に関するコーパス調査と得られたデータの分析を行った。研究成果の一部は、日本英文学会中部支部大会にて発表を行い、近代英語研究に掲載が決定している。おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は後置属格という構文内における不定冠詞の発達について調査・分析を行ったが、今後は、不定冠詞そのもののコーパス調査、分析を行い、言語の限定システムの解明に向けて研究を進めていきたい。しかし、不定冠詞そのものだけを追っても、その発達の道筋が判然としないことも十分に予想される。そのような場合、不定冠詞の関連構文(二重決定詞や後置属格)の発達から不定冠詞の発達を明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響により、3月に予定していた出張を取りやめたため、次年度使用が生じた。予定していた出張は2020年度に行うものとする。
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