2023 Fiscal Year Annual Research Report
英語の不定冠詞と関連構文の発達に関する実証的・理論的研究
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19K00673
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
茨木 正志郎 関西学院大学, 人間福祉学部, 准教授 (30647045)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | (不)定冠詞 / 後置属格 / 文法化 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、昨年度まで行ってきた不定冠詞と指示詞タイプの後置属格の発達に関する調査・分析に加えて、2021年度と2020年度に行った(不)定冠詞の史的発達と各時代における分布の変化を考慮に入れて、冠詞と後置属格の発達について生成文法理論の観点から考察した。 まず、定冠詞も不定冠詞もHopper and Traugott (2003)が主張する分化(divergence)という文法化プロセスを経て発達したという説を採用し、各時代における分布を調査したところ、15世紀初期には冠詞として確立していることが明らかになった。一方、後置属格の出現については、Gaaf (1927)やAllen (2002)などの先行研究のデータに加えて独自に行ったコーパス調査によって、不定冠詞タイプの後置属格は14世紀半ばに出現し、指示詞タイプの後置属格は15世紀半ばに出現し始めたことが明らかになっている。 冠詞の発達した時期と後置属格の出現した時期は15世紀前後でほぼ一致しており、これらの発達には関連性があることを示唆している。さらに、冠詞を含む二重決定詞と後置属格の史的分布について、二重決定詞が消失した後に後置属格が出現していることが明らかになっている。この調査結果も、冠詞の発達と後置属格の出現には関連性があることを示唆している。これらの事実より、後置属格は二重決定詞から発達したというHeltveit (1969)の構造再編成仮説は支持されるという結論に至った。 最後に、冠詞と後置属格の発達について、生成文法の理論的枠組みを用いてそれらの出現と発達に説明を与えた。具体的には、二重決定詞と後置属格は同じ基底構造を持つと仮定し、もともとDより低い位置にあった所有代名詞と冠詞が同じD要素へと再分析され、名詞の前で競合するようになった。そのため、所有代名詞が名詞の後ろに置かれるようになり後置属格が現れた。
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