2021 Fiscal Year Research-status Report
名詞から動詞をつくるー事象統合による語彙創造のしくみ
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19K00679
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小野 尚之 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (50214185)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 語形成 / 語彙意味論 / 名詞 / 動詞化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、名詞から動詞をつくるプロセスに事象統合(event integration)という意味の合成過程が広く関与することを実証的に明らかにすることを目的とする。名詞から動詞をつくるプロセスとは、名詞を基体とする接辞化、名詞から動詞への転換、さらに軽動詞構文までを含み、異なる言語現象でありながら、共通の原理が働いていることを示す。本研究は、生成語彙意味論を理論的基盤とし、語彙の創造性を支える重要なしくみを、意味の共合成やタイプ強制と いった観点から説明する。また、英語のみならず、日本語の分析によってもこの問題についての重要な示唆が得られることから、両言語の対照分析の観点から研究を進める。2021年度(令和3年度)は、昨年に引き続き、新型コロナの世界的な拡大状況によって研究活動は著しく制限されたが、そのような状況下でも、本研究に関する成果報告として国際会議での研究発表を2件行うことができた。1件目は、ヨーロッパ日本学研究大会(EAJS)での、Event/Thing Homomorphism of V-N Compounds in Japaneseと題する発表である。この研究では、「忘れ物」のような名詞が、個体と出来事を両義的に指すことができる事実をとり上げ、なぜそのような両義性が生じるのかたを説明した。この現象には、軽動詞「する」を用いた事象統合による意味合成プロセスが含まれており、本研究における成果である。もう1件は、International Workshop on Secondary Predication 2021におけるA Semantic Typology of Resultativesと題する発表である。この発表では、英語の結果句が意味的特性から2種類に分類されることを実証的に論じた。この成果は、2022年度中に海外出版社から論文として刊行される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由 本研究プロジェクトは次の2つのことを研究の中心的なテーマとして設定している。 (i)個体を表す名詞がいかに事象に結びつき、その事象を動詞の意味として組み込むか、すなわち、名詞の事象がどのように動詞の事象に統合されるのかを明 らかにすること (ii)日英語のデータを比較し、接辞化、転換、軽動詞に関わる意味生成を明らかにする。個体を表す名詞がいかに事象に結びつき、その事象を動詞の意味とし て組み込むか、すなわち、名詞の事象がどのように動詞の事象に統合されるのかを明らかにすること このうち、今年度は(i)の目的を達成するため、日本語の軽動詞構文に関わる研究を進め、成果をあげることができたと考えているので、研究計画に沿った進展 があったと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、昨年後半から増えてきたようなオンラインによる国際会議や研究会が増えて、研究活動に道が拓けてきたように思われた。今後は、さらに制限が緩和される方向にいくと思われるので、これからは計画したような成果の発信は可能になると思われる。国内においても研究活動にオンライン会議は欠かせないものになりつつある。今年度はそのような変化も期待しつつ、研究を推進する所存である。
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Causes of Carryover |
予定していた国際学会がオンライン開催になったことで、旅費の使用がなかった。また、延期になった学術会議もあり、予定していた金額に至らなかった。ただし、今後は延期された会議が開催される可能性があり、次年度に繰り越して使用する必要がある。
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Research Products
(2 results)