2021 Fiscal Year Research-status Report
Ideophoneと言語進化に関する日英対照を中心にした語用論・類型論的研究
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19K00681
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金谷 優 筑波大学, 人文社会系, 助教 (50547908)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イディオフォン / 構文文法 / 語用論 / 日英語対照 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、大きく三つの研究課題を進めることができた。一つはbecause X構文(例:because homework)に関する研究である。研究代表者がすでに2017年に刊行している日本語の論文を大幅に加筆修正し、英語で公開した。本稿では、「言語使用の三層モデル」(以下、三層モデル)と呼ばれる言語理論の枠組みで現象を説明し、構文全体では伝達の意図を持った公的表現である一方、X要素は話し手の思考表出である私的表現として機能することを論じ、公的表現の中に私的表現を埋め込むことの一般的な意義をその他の現象(日本語の会話の中に出現する独り言や「ください」の新奇用法)と関連付けながら強調した。これにより、言語の伝達機能に対する思考表出機能の位置づけを明確にすることにつながり、本研究課題の目的達成へと近づいた。 二つ目は、イディオフォン(表意音)に関する記述研究であり、英語に比べて日本語にはイディオフォンが豊富である理由を三層モデルに基づいて説明することを試みる研究を行い、論文として発表した。日本語が私的自己中心言語であり英語が公的自己中心言語であるという三層モデルの類型論的な一般化とイディオフォンの私的表現性にもとづき、私的自己中心言語である日本語ではイディオフォンが豊富であるが、公的自己中心言語である英語では日本語ほど豊富にないことが予測できると論じた。これにより、言語の思考表出機能と個別言語の特性との相関を予測するモデルを提案できた。 最後に、日本語のイディオフォンの一例として擬情語に着目し、その多覚性が言語知識の一部としてどのような形で心的表示されているのかを提案する国際発表を行い、論文を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題は当初3年で計画していたが、長引くコロナ禍の影響により、学会出張や調査のための出張ができず、当初の計画を大幅に修正する必要が出てきたためというのが大きな理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定よりやや遅れているのは、当初予定していた出張の取りやめが大きな要因である。 当初予定していた調査のための出張は中止し、国内あるいはインターネットを用いて調達できる資料を基に調査を行うこととする。 また、成果発表のための出張に関しては、今後出張要件が緩和されれば国外の学会へも参加するが、それが難しい状況が続くようであれば、研究成果発表の場をオンライン会議や論文の刊行に求める。 また、当初の予定より遅れているという状況である一方、1年間で新たな基本調査を行い、成果をあげることは難しいため、可能な限りこれまでの期間で収集した知見をまとめることに集中し、本研究課題の総括を行う。
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Causes of Carryover |
長引くコロナ禍により、当初予定していた資料収集および学会発表のための海外出張が複数取りやめになったため。 当初、予定した資料収集および情報収集のための出張を取り止め、国内で調達可能な資料の収集を行い、それに基づき研究を進める。 また、国際会議への出席が難しい状況が続くため、学会発表の代わりに論文の形で研究成果を公開する。そのために執筆および論文公開に必要な経費(英文校正費やオープンアクセスのためのArticle Processing Charge)として計上することで、研究計画の軌道修正をしつつ、成果を発表する。また、出張に対する制約が比較的緩い国内学会での発表を行うことで研究成果を発表する。
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Research Products
(5 results)