2023 Fiscal Year Annual Research Report
Ideophoneと言語進化に関する日英対照を中心にした語用論・類型論的研究
Project/Area Number |
19K00681
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金谷 優 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (50547908)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ideophone / 構文文法 / マルチモダリティ / 言語進化 / 語用論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、大きく二つの課題に取り組んだ。まず、本研究課題の総括として、「脱イディオフォン化(deideophonization)」が通時的には構文化、共時的にはスキーマ化として捉えられるという提案を行った。ここで言う「通時的」「共時的」というのは、それぞれ「系統発生レベル(=人間言語の創発)」「個体発生レベル(言語獲得)」のことであり、ともにマルチモーダルなイディオフォンからジェスチャーが脱落した通常の語が進化・発達するという方向性を示すということを論じた。この成果は、チェコ・プラハで行われた12th International Conference on Construction Grammarで発表した。この研究により、①イディオフォンが本来的にはジェスチャーを伴うマルチモダルな構文(ジェスチャーと言語表現が緊密に結びついた実態)として心的表示を持つが、実際の使用においては必ずしもジェスチャーを伴う必要がないこと(事例研究としてKanetani 2021)、②人間言語がジェスチャーからイディオフォンを経て音声言語へ進化したとする言語のジェスチャー起源仮説(Haiman 2018)の妥当性を示し、本研究課題全体の目的を達することができた。 第二に新たな研究課題との橋渡しとして、イディオフォンの下位分類の一つとされる英語のtwin forms(chit-chatのように同じまたは類似した要素を繰り返す語)の表出性について分析を進めた。twin formsの発話時に付随するジェスチャーが有意味であることを明らかにする一方で、その出現率が高くないことから、マルチモダルな構文として心的表示されているわけでないと結論付けた。その成果をドイツ・デュッセルドルフで行われた16th International Cognitive Linguistics Conferenceで発表し、Tsukuba English Studies 42に論文としてまとめ、公刊した。
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