2020 Fiscal Year Research-status Report
On the relation between marked constructions and grammatical systems in English and Japanese
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19K00685
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
今野 弘章 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (80433639)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 有標性 / 構文文法 / 語用論 / 項 / ヲ格 / Xヲナニスル構文 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、予定を変更し、2019年度に追加で扱った現象の研究を更に進めた。本研究の目的(英語と日本語の一般的文法特性から逸脱しているという点で「有標」と考えられる構文に注目し、それら有標構文の意味・語用論的特殊性と日英語の文法体系との相関関係を明らかにすること)に照らし、特に重要な現象だと思われるからである。研究成果は学会および研究会で口頭発表した。 具体的研究内容は以下の通り。日本語のXヲナニスル構文(例:親の形見を何してんだ!)は、統語的認可子を持たない「対象のヲ格」を含む。このヲ格は、なんらかの他動詞との主要部-補部関係によってではなく、Xヲナニスル構文の使用場面上の特性によって対象性が保証されて認可される。この、語用論的情報によってヲ格項が認可されるという状況は、前年度実績報告でも述べた通り、例えば、統語構造と語用論的情報が関連する度合いが高い(Huang 2000)など、先行研究によって指摘されてきた日本語の一般的な性質とも一致する。 さらに、日英語対照研究の観点から、以下のことも明らかにした。Xヲナニスル構文に形式及び語用論的機能の両面で類似した英語の表現に、WXDY構文(Kay and Fillmore 1999)がある。英語のWXDY構文では、Xヲナニスル構文と異なり、他動詞抜きでの対格項の認可は観察されない。この結果は、いわゆる構文による項の認可について、以下の意味合いを持つ。先行研究では、Washio (1997)をはじめとする結果構文の日英対照により、英語で構文による項の認可が可能な環境において、日本語ではそれが不可能なことが分かっている。日本語のXヲナニスル構文と英語のWXDY構文における差は、これまで分かっているものとは逆の状況、すなわち日本語が構文の項を認可する環境において英語ではそれが不可能な場合があることを示していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画を変更し、新たな現象の研究を追加で行ったため。ただし、研究内容および得られた研究成果自体は本研究の目的に合致するものであり、大きな影響はないと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本来2年目に予定していた内容(統語的時制辞を欠いた節が主節として振る舞うという点で形式的に共通する日英語の構文に注目し、それらが示す意味的特殊性と日英語の時制体系とを比較し、そこから得られる一般化を考察すること)を、3年目に併せて実施する。
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Causes of Carryover |
予定していた謝金の支出がなかったため。繰り越し分は、新たに追加した研究対象に関連する研究図書の購入に充てる予定である。
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