2021 Fiscal Year Research-status Report
Aelfric's Grammarの11世紀写本間言語変異の研究
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19K00691
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
市川 誠 東京理科大学, 教養教育研究院北海道・長万部キャンパス教養部, 講師 (60625747)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アルフリッチ / 古英語 / 写本 / 方言 / 写字生 / 文法 / 英語史 / 写本間言語変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、過去2年間に調査したHarley107写本と Julius A.ii写本の2つの写本と同じく南東部方言の要素を含む写本と先行研究で指摘されるDurham Cathedral Library B.III.32写本の調査を行い、調査結果を「アルフリッチの『文法』Durham Cathedral Library B.III.32 写本の言語」の題名で本務校の紀要に投稿した。その論文は令和4年3月に公刊された。論文ではDurham写本の主な言語変異として(1) 綴りaeで表される短母音 a + 鼻子音 + i ウムラウト (2) ウエストサクソン方言のyに対するe (3) e からyへの反転綴り (4) 二重母音eaに対する綴りeと割れの欠如 (5) 口蓋子音の後の二重母音の欠如 (6) 無声摩擦音の有声化の6つを指摘した。南東部方言と結び付きが指摘される3つの写本の調査から判明したことは、南東部方言要素の現れ方は一様でなく、その出現頻度は写本間で異なることである。例えば、綴りaeで表される短母音 a + 鼻子音 + i ウムラウトは、Harley 107写本とDurham写本で観察される一方、Julius A.ii写本では現れない。南東部方言に特徴的な eoの代わりのioの綴りはHarley 107写本に数多くみられるが、Julius A.ii写本やDurham写本には現れない。子音について言えば、摩擦音 fからvへの有声化は、Julius A.ii写本とDurham写本で観察されたが、その頻度は非常に小さいものであった。将来的な課題としては、『文法』の11世紀の他の写本の調査を続行するだけでなく、アルフリッチの『カトリック説教集』の写本の一つであり南東部方言を含む写本として知られるOxford, Bodleian Library, Bodley 340+342写本などの言語も調査し、古英語標準語から垣間見える南東部方言要素の現れ方についてさらに明らかにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、令和元年度から令和3年度の3年間の研究期間内でアルフリッチの『文法』の11世紀の写本すべての転写を終了し、転写テキストに基づいて作成した写本毎のデータベースを利用して言語変異を網羅的に明らかにする予定であった。しかし、令和3年度、新規科目準備に伴なうエフォート率の低下のために、British Library, Cotton Faustina A.x 写本とBritish Library, Royal 15 B xxii写本の転写が完了しないまま、当初の研究期間を終了した。研究期間内に写本の転写が終了しなかったため、進捗状況は「やや遅れている」と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間延長が認められた令和4年度は、前述のBritish Library, Cotton Faustina A.x 写本とBritish Library, Royal 15 B xxii写本の2つの写本の転写に集中する。なお、Faustina A.x 写本に関しては令和4年4月30日の段階で転写を半分まで完了させた。6月中旬には転写が終了する予定である。さらに、Royal B xxii写本の転写を7月までに終了させ、本研究課題の最終的目標である Zupitza の刊行本からは分からない『文法』の写本間の言語変異の全体的な解明を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症のため、当初予定していた海外図書館での調査を実施できなかったため。その代わりに、予算を文献調査に充当した。
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Research Products
(2 results)