2021 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical and Demonstrative Research on MERGE and Determinacy in Generative Grammar
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19K00692
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
後藤 亘 東洋大学, 経営学部, 准教授 (50638202)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 透 明治大学, 文学部, 専任教授 (30193254)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | MERGE / Determinacy / Stability / Search / Binarity / PIC / Resource Restriction / Input/Output Determinacy |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、Chomsky et al. (2019)の枠組みで提案されたMERGEとDeterminacyを理論的及び実証的に研究することである。研究実施計画に従い、令和3年度は、令和2年度に明らかになったStability研究と並行しながら、Determinacy Theory of Movement (DTM)の今後の展望について考察した。DTMでは、DeterminacyはMERGEのinputに適用され、そのaccessibilityはPhase Impenetrability Condition (PIC)だけによって規定される。その後の研究により、DTMで得られた知見は、MERGEの入力を決定する前操作のSearch Σのレベルで捉え直すことが可能であり、むしろその方が「最適な言語デザイン」になるのではないかという方向性が見出されてきた。より具体的には、Resource Restrictionと呼ばれる脳の一般的な特性から導出可能なBinarity (n=2)とPICを、Search Σの適用過程で課される条件とすることで、DTMが明らかにした理論的及び経験的帰結をすべて継承することができるだけでなく、MERGEの下位形式として存在するExternal MERGE (EM)とInternal MERGE (IM)を統一的に扱うことも可能となり、さらには、minimalityなどの条件を一切MERGEに課す必要はなくなるため、真の意味でのFree MERGE理論を追求・構築できる可能性が出てきた。本研究課題のMERGEとDeterminacy研究から得られた成果に基づいて、このような新たな次元(脳の一般特性とSearch Σの研究)へと有意義なかたちで研究を発展させることができたことは大きな成果であったと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和3年度もコロナパンデミックの影響で一度も国際学会で研究発表を行うことができなかったが、本研究課題の進捗状況については「当初の計画以上に進展している」といえる。その理由としては、1) 上述の通り、本研究課題における研究(MERGEとDeterminacyの研究)成果を踏まえて、そこから新たな研究(Searchの研究)へと有意義な形で発展させることができているということ、2) 本研究の成果が国内外で広く注目されているということ(2021年の7月にオンラインで開催された上智言語学会で招待講演を行ったこと、2022年8月に開催される国際理論言語学会(GLOW in Asia)の特別ワークショップ企画の参考文献として本研究課題で明らかになった成果をまとめた論文が引用されているということ)、3) 2021年度も新たな論文として本研究課題の成果を今後の展望を明らかにするかたちでまとめることができたこと (Proceedings of Sophia University Linguistic Society 35.)等が挙げられる。なお、本研究課題における成果は、生成文法理論の提唱者であるNoam Chomsky氏にその都度報告し意見交換を行なっているが、本研究課題を開始したときには未だ明らかになっていなかった概念(例:FormSequence、FormSet、Search Σ等)について、偶然同じような方向性を探究しているということも私信で確認できた(FormSequenceとFormSetの考え方については2021年5月に、Searchの考え方については2022年11月に確認できた)。これは、研究開始当初では予想もできなかったことであり、今後のさらなる研究へと繋がる発見であった。以上のことから、本研究課題の進捗状況については、当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は本研究から明らかになった重要概念(例:Resource Restriction, Search Σ, Binarity, Minimali Search, PIC等)についてさらに研究を進めて行く。これらの概念は、本研究課題を進めている途中に出版されたChomsky (2021)で議論されているため、それとの建設的な比較を通して理論の構築・検証・再構築を行なって行く。そしてその進捗は、Noam Chomsky氏にその都度報告し意見交換を行う。具体的には(現時点において)以下のような問いを考察していくことで今後の研究を推進して行く。 (1) Chomsky (2021)はMergeの条件としてMinimal Yield (MY)(=Mergeはnew accessible elementを1つだけworkspaceに追加するという条件)を提案したが、MYをSearch Σレベルで捉え直した場合、どのような帰結が得られるのか? (2) Chomsky (2021)はProper Binding Condition の「良い例」は扱っているが「悪い例」は扱っていないので、Search Σレベルでどう説明できるのか?その際、Merge適用のタイミングとPIC適用のタイミング(順序性vs.同時性)はどうなっているのか? (3) Chomsky (2021)はMergeの条件としてMYの他にDuality of Semantics(=External Mergeはtheta-positionのところでのみ適用されInternal Mergeはそれ以外のところでのみ適用される)は、Mergeを適用する際の条件として機能すると提案しているが(MYをSearch Σレベルで捉え直すように)、Duality of SemanticsをSearch Σで捉え直した場合、どのような統一化が可能か?
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Causes of Carryover |
理由は、コロナパンデミックにより予定していた国際学会への参加がキャンセルとなったためである。今後の使用計画として、国際学会に参加し研究発表を行うことを予定している。
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Research Products
(3 results)