2023 Fiscal Year Research-status Report
属性叙述のthere/have交替に関する記述的・理論的研究
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19K00697
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
南 佑亮 神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (40552211)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | there存在文 / 構文文法 / 心理名詞 / 異構文 / 主観性 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は2021、2022年度に引き続き、there存在文におけるbe動詞後の名詞句(pivot)に心理経験を表す名詞(=心理名詞)が生起する現象の観察・記述および構文文法的な分析のに関する議論に従事した。主な研究活動は、(i)2022年度に得られた研究成果をさらに発展させ国内外に発信すること、(ii)本研究プロジェクトの成果を論文化することを念頭に置いた理論的考察を進めること、の二点にまとめられる。 (i)について:5月にプラハで開催された国際構文文法学会(ICCG12)において、心理名詞を伴うthere存在文に関する事実観察と分析に関する研究発表を行ない、欧州の研究者から有益なフィードバックを得た。続けて、9月の第24回日本認知言語学会全国大会のワークショップ(「周辺的」構文現象から迫る認知英文法研究)において、従来から本研究プロジェクトの成果の中で指摘してきたpivotに心理名詞が生起するthere構文の2類型について、5月の研究発表成果も加味した形で発表を行ない、同発表の内容は論文として公表した(『認知言語学会論文集』第24巻)。 (ii)について:形式を共有せずに意味・機能を共有する構文間の関係(horizotal relations)の解明において重要な鍵を握ると思われるallostructions(異構文)という概念について、近年の議論を踏まえながら独自の議論と提案を含めて『国際文化学研究』第60号に発表した。また、『国際文化学研究』第61号に発表した共著論文において「ことばの主観性から見る創造性」というセクションを担当し、「主観性(subjectivity)」の観点からthere存在文の意味機能について独自の視点から考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新しい研究機関で研究に従事するのは二年目となり、一年目よりもさらに効率よく研究に取り組めたと言える。2022年度までは本研究が対象とする現象そのものの観察・記述・分析に注力してきたが、今年度は関連現象および必要な理論的考察にも取り組むことができた。加えて、本プロジェクトの研究成果を盛り込んだ論文を本年度末に執筆し投稿を終えた状態である。このように、研究プロジェクトの総括を行なう最終年度に向けた準備はかなりの程度まで整った状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
①2024年度が本研究プロジェクトの最終年度となる見通しであるため、研究成果を論文化し、学術誌に投稿する。 ②①を進めながら、心理名詞がpivotに生起するthere存在文以外のthere存在文のデータにも目配りし、there存在文の情報構造に重点を置いた従来の研究成果と本研究成果の接続(あるいは統合)の可能性を探る。
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Causes of Carryover |
コロナ渦において研究活動が2年ほど停滞していた分の約半分は2023年度で使用できたと考えている。残りの分を2024年度の研究活動のために充当する予定である。具体的には、国内外の出張旅費、2023年度内に購入しきれなかった洋書を中心とした最新の書籍(研究書、雑誌、その他)の購入、英文校閲料、インフォーマント調査協力への謝礼、に使用する見込みである。
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