2022 Fiscal Year Annual Research Report
留学中の第二言語習得とアイデンティティ:映像データによる自伝的アプローチ
Project/Area Number |
19K00703
|
Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
海野 多枝 東京外国語大学, 大学院国際日本学研究院, 教授 (00251562)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 第二言語習得 / マルチモーダル第二言語学習史 / 自伝的アプローチ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、言語的語りと視覚的資料を複合的に用いたマルチモーダル第二言語学習史の分析を通じて、留学中の第二言語学習者のビリーフ及びアイデンティティの構築を多角的な視点で探るとともに、視覚的データを活用した新たなライフストーリー研究法を開拓した。近年、情報機器の普及等により写真などの視覚的資料の活用が一層普及する中、応用言語学の研究では言語的データが主流を占め、視覚的資料の活用はいまだ未開拓の部分が大きい。本研究では日本語を学ぶ外国人留学生と英語を学ぶ日本人大学生が作成したマルチモーダル第二言語学習史データを収集し、学習史を構成する視覚的要素を中心に据えて分析した。その結果、個々の学習史で特定の種類の視覚的資料が多く使われる傾向が見出され、また、これは学習者の第二言語学習のビリーフ及びアイデンティティを反映していること、日本語と英語の学習者間には異なるパタンが見られることなどが明らかになった。以上の結果は言語的ナラティブ中心の研究で見過ごされてきたビリーフやアイデンティティの新たな側面を浮き彫りにするとともに、言語的資料と視覚的資料を組み合わせた新たな研究方法を提案するものであった。 本研究の成果は英語による研究論文4件にまとめ、うち2件は、Scopusに認知され影響度指数Q1(上位25%)ランクの国際雑誌(Modern Language Journal他)に公刊され高い評価をいただいた。1件はカザフスタンのナザルバエフ大学の研究者らと共同で英国のMultilingual Matters社から出版予定の書籍への収録が採択された。また、英国やシンガポールの国際会議で成果を発表した。来年度開催の国際応用言語学会でも、海外の研究者との共同シンポジウムに発表が採択されたため、今後も関連の研究者との国際的ネットワークを広げるとともに、日本での研究成果を海外に向けて発信していきたい。
|
Research Products
(5 results)