2019 Fiscal Year Research-status Report
The construction of language structure based on the schema generation in first and second languages
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19K00705
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
橋本 ゆかり 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (40508058)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 認知言語学 / 用法基盤モデル / 第二言語習得 / 年少者教育 / コーパス研究 / フィールドワーク / 文法 / 日本語教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、認知言語学の用法基盤モデルの観点より日本語の第一言語(以下、L1)と第二言語(以下、L2)の習得プロセスとメカニズムの両方を明らかにすることである。L2習得の子ども(以下、L2児)、L1習得の子ども(以下、L1児)、L2習得の大人(以下、L2大人)の文法カテゴリーごとの習得プロセスを追究し、L2児、L1児、L2大人と3者間で比較し普遍的部分と可変的部分を見極めた上で、領域固有の特徴と普遍的な言語構造構築メカニズムの解明を目指す。申請者は固まり学習からスキーマを生成し、それらの合成により言語構造を構築するという「スロット付きスキーマ合成仮説」(以下、CSS仮説)を提示しているため、その妥当性を検討する。現場調査を行うとともに還元を図る。課題は次のとおりである。課題1)L2児の習得プロセスを明らかにし、CSS仮説の妥当性を検討する。課題2)L1児の習得プロセスを明らかにし、CSS仮説の妥当性を検討する。課題3)L2大人の習得プロセスを明らかにし、CSS仮説の妥当性を検討する。課題4)L2児、L1児、L2大人の異同を明らかにし、差異をもたらす要因を追究する。課題5)L2習得に必要な教育環境を明確にし、教材開発を行う。 2019年度は次のとおり研究を進めた。【課題1~4】・動詞形の可能形に焦点を当てて、L1児、L2児、L2大人の習得順序の異同とその要因について著書にまとめた。・文構造について、コーパスと収集データを用いて現在分析中である。【課題5】・教材研究を継続的に進めた。・多義語学習教材案の実践研究を論文にまとめた。・別の教材案に関する研究を進め、学会発表に採択された。・L2児の異文化環境に関する研究を進めた。【その他】・『子どもと大人の日本語習得と教育デザイン研究会』を立ち上げ、習得と教育に関する研究指導を行うとともに、大会を開催し研究内容の公開に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題すべてにおいて、研究が可能なところから進めている。 当初の研究計画に記載した研究領域について研究を始めているが、該当する表現の産出数が想定した以上に少ないこともあり、当該文法カテゴリーのプロセスをまとめるに至っていない。これについては、文法形態素や表現形式同士の関係性などにも注目し、より広い視点から習得プロセスを捉え、根底にあるメカニズムを探っていきたいと考える。著書の執筆や国際会議で発表した研究を論文化するという研究活動も行いつつ、別の国際会議での発表に申し込み採択に至っている。また、論文化までは進んでいないが、コーパスデータや過去に収集したデータを多様な観点から分析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も研究計画に記載した課題について研究を進めていく。今年度は、L2児の複数の動詞形について研究を進める予定であったが、5年以上にわたって採集したデータであっても、研究対象のカテゴリーの動詞がそれほど見られないこともあり、習得プロセスをまとめるに至っていない。来年度は、L2大人やL1幼児に焦点を当てて研究を進めていく。文構造に関してはデータを分析し始めているが、今後は、文法カテゴリーにかかわらず、L2幼児、L2大人、L1幼児の特徴を抽出し、共通性と差異を追究していくつもりである。2020年度は、コロナ感染拡大により学会の大会が延期あるいは中止となっていることから、学会発表が予定通りにできない。研究発表よりもデータをまとめることに力を注ぐ。
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Causes of Carryover |
今年度は、出版社においてかなりの割引セールがあり、大量の本を格安で購入することができた。来年度は、コロナ感染拡大により学会参加も叶わないことが考えられる。そのため使用計画を変えざるを得ない。遠隔の会議や打ち合わせのための機材費、研究補助の謝金、図書や文具に費やす。さらにプリンターやパソコンも古くなってきたため、購入する予定である。
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