2021 Fiscal Year Research-status Report
外国人留学生が行為主体者として求めるグローバル・シティズンシップの検証
Project/Area Number |
19K00713
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Research Institution | Ryutsu Keizai University |
Principal Investigator |
永岡 悦子 流通経済大学, 流通情報学部, 教授 (40339734)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鄭 惠先 北海道大学, 高等教育推進機構, 教授 (40369856)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 外国人留学生 / KH Coder / M-GTA / 日本留学の意義 / 日本語能力の重要性 / 社会的スキル / 人的ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本の大学で学ぶ外国人留学生を対象に、グローバル・シティズンシップ教育に対する学習者のニーズと特性を把握し、教育方法を検討するものである。令和3年度は、前年度までに実施した、日本の高等教育機関で学ぶ外国人留学生を対象とした「異文化理解に対する意識調査」のアンケートとインタビュー調査を量的・質的に分析し、論文を執筆した。 量的分析では、203名分を対象に、KH Coderを使用し、共起ネットワークによって抽出された話題(概念)を分析する「概観分析」と、身分・在日期間・日本語能力・国籍という4つの外部変数によって抽出された特徴的な語を分析する「特徴語分析」を行った。「概観分析」からは、新たな体験からの精神的な成長を日本留学の意義としていたこと、また留学中の問題や不安をメタ認知や社会的スキルを用いて解決しており、そのために日本語能力とコミュニケーション能力が必要だと感じていることがわかった。「特徴語分析」では、4つの外部変数のうち、「在日期間」が長くなるにつれて日本生活で必要な能力へのイメージも具体化し、「日本語能力別」では、日本語能力が低い方で日本語重視の傾向が強く、日本語能力が高い方では社会的スキルの重要性を意識する傾向が見られた。 質的分析では、留学生10名に対するインタビュー調査をM-GTAの手法で分析した。その結果、【母国と日本の比較】【日本語学習への気づき】【ネットワークを作る・参加する】【必要とする異文化間能力】【留学のメリット】という5つのコアカテゴリが生成された。このうち、【日本語学習への気づき】と【ネットワークを作る・参加する】は互いに連動しつつ、留学生の異文化間能力に対する意識形成にもっとも密接に関わる要素であり、日本語力の上達とともにネットワークに主体的に参加できた成功体験が、日本留学に対する肯定的な評価につながっていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、日本の大学で学ぶ外国人留学生を対象に、グローバル・シティズンシップ教育に対するニーズを学習者の特性に応じて把握し、その結果を「グローバル・シティズンシップのカリキュラム指標」としてまとめ、「国際共修カリキュラム」の構築に還元することである。令和3年度までに「異文化理解に対する意識調査」のアンケート調査を用いた計量テキスト分析と、インタビュー調査を用いた質的分析を行った結果、日本の大学で学ぶ外国人留学生にとって、日本語能力とコミュニケーション能力、そしてネットワークの形成や参加が重要であることが明らかになった。日本語力の上達とともにネットワークに主体的に参加できた成功体験が、日本留学に対する肯定的な自己評価につながっている。ただし、留学生活に対する態度と意識には、留学生の身分や国籍といった社会・文化的背景の影響も認められる。そのため、日本の大学で学ぶ外国人留学生を対象に、グローバル・シティズンシップ教育には、日本語能力とコミュニケーション能力を軸に、学習者の特性に応じた調整ができる教育方法が必要であることが総合的に検証できた。 さらに、2019年末から続いているコロナ禍により、人の移動や行動が制限され、オンラインを通じたコミュニケーションが急拡大した。教育機関で実施された外国人留学生を対象とするアンケート調査の比較や留学生による作文などから、パイロット調査として分析を行った。その結果、授業の効果や効率を重視する姿勢や、感染に対する不安やストレスがあることがわかった。さらに、教育環境が変化する中で授業実践を積み重ねてきた。これらの調査結果と授業実践の総合的なまとめとして、現在、日本の大学で学ぶ外国人留学生を対象としたグローバル・シティズンシップ教育の教材の作成を準備しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、過去3年の調査結果や教育実践の結果をもとに、「国際共修カリキュラム」の構築にむけて、引き続き授業設計のため指針案の作成や、教材化にむけた試作版の作成に取り組む計画である。また、令和3年度までの授業実践で使用していた教材を今までの研究成果を取り入れながら、より汎用性が高くなるように再編集し、試作版の教材を作成する予定である。試用版教材の開発過程や成果については、論文執筆や研究発表で報告していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大に伴い、対面での調査ができなかったことが大きな理由である。また感染予防のため、業務出張が禁止され、出張費の使用ができなかったことも要因である。
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Research Products
(3 results)