2021 Fiscal Year Research-status Report
独日バイリンガル児の継承日本語での書く力を伸ばす「国語教科書活用法」の開発
Project/Area Number |
19K00719
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
ビアルケ 千咲 東京経済大学, 全学共通教育センター, 特任講師 (70407188)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴山 真琴 大妻女子大学, 家政学部, 教授 (40350566)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 継承日本語 / バイリンガル / 書くこと / 教授法 / ドイツ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究プロジェクトの目的は、在ドイツ日本語補習授業校(以下、補習校)で学ぶ、独日バイリンガル児の継承日本語での書く力を伸ばす指導方法の開発である。独日バイリンガル児が日本語で文章を書く際の強みである、現地校で身につけた文章の作成スキルや知識を日本語へ転移させ、不足しがちな日本語の表現手段を補う指導方法を開発する。 本年度は、①これまで開発してきた指導方法である「国語教科書活用法」を実際に補習校で試行し、より具体的なものにすること、また、②「国語教科書活用法」の基盤となるデータベースにデータを追加することを目指していた。それぞれの成果は以下の通りである。 ①「国語教科書活用法」の試行:在ドイツ補習校の小1および小6学級において、担当講師の協力を得て「国語教科書活用法」の試行授業を行い、効果と課題を検討した。その概要は次の通りである。ドイツの現地校の学習で扱った文種を日本の国語教科書から取り上げ、つけさせたい書く力の目標を設定して「逆向き設計」で授業計画を立てた。ドイツの指導方法も参考にして、児童の日本語力に合わせた多様なスキャフォルディングを学習活動や教材に組み入れて授業を行った。これにより、補習校児に不足しがちな、各文種を書くために必要な表現に繰り返し触れさせることができ、書くことが取り組みやすいものになった。また、小6児童の場合、現地校の学習で身につけた文種に関わる意識を活性化すれば、これを日本語に活用させることができた。ただし、学習活動や教材に用いるスキャフォルディングは、補習校児の発達段階や日本語力に合わせて入念に調整することが重要であることも分かった。 ②新しい中学校国語教科書の変更点のデータベース化:日本では、新しい学習指導要領の実施に伴い、中学校国語教科書の内容が令和3年度より変更された。そのため、変更点をこれまでに作成した国語科の指導事項のデータベースに追加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクトの第3年次は、次の作業の完了を目指していた。①「国語教科書活用法」の試行、②試行授業の結果を踏まえた学習活動や教材例の開発、③令和3年度改訂の中学校国語教科書における変更部分のデータベースへの追加、である。 このうち①および③については完了したが、②については、次の理由から一部の完了にとどまっている。日本の国語教科書では、特定の文種を書くための語彙や文法が学習内容として扱われていないため、本研究ではこれらを特定するとともに、それを扱う学習活動や教材例の開発が新たな課題として生じてきた。本年度は、試行授業を行った小1と小6について、説明的な文章の文種に関連する学習活動と教材例を開発することができた。しかし文学的な文章の文種に関連するものや、その他の学年については未着手である。 他方で、次年度に予定していた「ドイツ地区現地採用講師研修会」における「国語教科書活用法」の紹介については、主催者からの依頼により、本年度実施することができた。 したがって、当初の計画とは異なるものの、総合的には「おおむね順調に進捗している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、以下の作業を予定している。 ①在ドイツ補習校において引き続き試行授業を行い、2021年度には未着手であった文学的な文章の文種として「物語文」を取り上げ、これに関連する学習活動と教材例を開発する。 ②各学年で扱う多様な文種を書くために必要な語彙や文法を特定し、試行授業の結果をもとに効果的な学習活動と教材例を蓄積してゆく。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染拡大により海外渡航ができず、在ドイツ補習校における「国語教科書活用法」の試行授業の見学等の調査出張ができなかった。そのため次年度使用額が生じた。2022年度は海外渡航が可能になれば、試行授業の見学など出張を計画しており、そのために必要な費用に充てる予定である。
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