2022 Fiscal Year Research-status Report
独日バイリンガル児の継承日本語での書く力を伸ばす「国語教科書活用法」の開発
Project/Area Number |
19K00719
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
ビアルケ 千咲 大妻女子大学, 人間生活文化研究所, 研究員 (70407188)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴山 真琴 大妻女子大学, 家政学部, 教授 (40350566)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 継承日本語 / バイリンガル / 書くこと / 教授法 / ドイツ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、在ドイツ日本語補習授業校(以下、補習校)で学ぶ独日バイリンガル児の、継承日本語での書く力を伸ばす指導方法を考案することである。バイリンガル児が現地校で身につけた文章の作成スキルや知識を日本語へ転移させ、不足しがちな日本語の表現手段を補うため、国語教科書を工夫して使う「国語教科書活用法」を開発する。 本年度の成果は、主に以下2点に整理できる。①2021年度に在ドイツ補習校の小1学級において実施した「国語教科書活用法」の試行授業の記録を分析した。②2022年度は、同学級においてさらなる書く力を目標とする試行授業を実施した。以下、それぞれの成果を述べる。 ①小1学級における試行授業の分析 2021年度の小1学級の試行授業では、説明的な文章の系統に属する「描写文」を書く力を目指したが、その分析により、次の効果が明らかになった。生き物や物の特徴を説明する描写文は負担の軽い文種であり、現地校と補習校の両方で書く学習を開始したばかりの小1児童に適している。補習校児童の場合、書くための語彙や表現が不足しがちなため、それらに触れさせる活動を準備として十分に行うことで、書く力がついた。また、日本語の書き言葉に触れる機会が少ないため、助詞や動詞の活用に注意し、「です・ます体」の文末で文を構成する学習活動が効果的であることが分かった。 ②小1学級における試行授業の実施 2022年度は、教科書単元の中でも文学的な文章の系統に属する「物語文」を取り上げ、これに関わる書く力の育成を目標に、小1学級で試行授業を行った。また、補習校児童がひらがなの表記システムを理解して、書くことに取り組みやすい指導方法を計画・実施した。以上の授業に適した教材を開発し、授業記録等のデータを収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はこれまで、日本の国語教科書では、特定の文種を書くために必要な語彙や文法が学習内容として扱われていないことを明らかにしてきた。そのため、書く際の語彙や文法の力が不足しがちな補習校児童・生徒を支援できるよう、学習活動や教材を新たに考案する必要が生じた。2021年度には、説明的な文章に関連する学習活動と教材例の開発を行ったが、2022年度は文学的な文章の系統に属する文種である物語文を扱う試行授業を行い、その教材や学習活動を開発することができた。したがって「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、次の作業を予定している。 ①2021年度に在ドイツ補習校にて実施した、小1学級における描写文の試行授業の分析をもとに、指導方法の詳細と効果について報告書にまとめて発表する。 ②2022年度に実施した、物語文とひらがなの指導方法の試行授業に関する記録を分析する。それにより、補習校で学ぶ児童生徒に適した学習活動と教材作成のポイントを明確化する。
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Causes of Carryover |
研究協力校での試行授業の見学を予定していたが、日程調整が難しく調査出張ができなかった。しかしオンライン会議や資料のやり取りによって必要な情報を入手することができ、次年度使用額が生じた。 2023年度は、補習校の児童生徒に適した指導方法をより精緻化するため、現地校における書くことの指導方法に関する資料の入手や翻訳など、必要な費用に充てる予定である。
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