2022 Fiscal Year Research-status Report
Cultual Propaganda for ''Greater East Asia Co-Prosperity Sphere''and the Japanese Language :Linkage of Expansion and Regurgitation between Japan,Manchuguo and the Mengjiang Regime
Project/Area Number |
19K00726
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
酒井 順一郎 九州産業大学, 国際文化学部, 教授 (10608269)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 善隣協会 / 善隣回民女塾 / 是永章子 / 是永俊子 / 日本語教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究テーマは『「大東亜共栄圏」文化工作ネットワークと日本語普及‐日・満・蒙の膨 張・逆流の連関‐』である。日本・「満洲国」・「蒙疆政権」の三者間を包括的に捉え、これらが「大東亜共栄圏」の文化工作のネットワーク領域においてどのような日本語普及の諸問題が生 じ、これがどのように膨張し、日本に逆流し、日本語の観念の曖昧さを露呈したのかを解明し、その後の日本語普及の挫折を考察するものである。 本年度はコロナ禍が完全に収束していなかったため、思うように史料調査・収集ができなかった。よって、1年の研究延長を申請した。 国内で収集した史料から、「蒙疆政権」下の回民工作のために創立された善隣回民女塾と日本語教育の役割を分析することができた。特に、善隣回民女塾の設立過程、教育の主導的役割を果たした是永章子・俊子が実施した日本語教育をジェンダーの視点から分析し、この教育機関の日本語人材育成が日本の回教工作をどのように支えていったかを考察できた。 特に興味深い点は、是永章子を「現地女性の慈母」としての役割を確立させ、塾生には良妻賢母を兼ね備わった日本語教師の育成を目標にした。その背景には、現地の回民女性を社会性に欠けた者として捉え、彼女たちの生活意識を矯正し、「大東亜共栄圏」の構築に貢献できる女性人材を育成するためには、日本の女子教育支配していた良妻賢母主義を採り、「いいえ」を排除し「はい」と「すみません」のみで日本との関係性を密接にしていこうとするものであった。そのためにも日本語で理解させなければならないという考えで日本語教育が実施されたのであった。 尚、研究論文としてとして、「善隣回民女塾と是永章子・俊子」新世紀人文学研究会『新世紀人文学論究』第7号2023年を発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「蒙疆政権」内の回民工作は日本の「大東亜共栄圏」建設にとって共産勢力及び漢民族への牽制、交易ルートの確立等、欠かせないものであった。その工作の一環としてここでの日本語教育の実施は有効な手段と考えられていた。しかし、従来の研究ではこれらの教育実態が十分に研究されていなかった。本年度は日本国内で収集した史料を基に分析し考察できたことは、本研究全体に意義ある研究成果を残すことができたとえいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は最終年度である。よって、これまで研究したものを鑑みながら、「大東亜共栄圏」内において日本・「満洲国」・「蒙疆政権」の三者間を包括的に捉えながら、三者の文化工作のネットワーク領域においてどのような日本語普及の諸問題があり、それが日本にどのような影響を及ぼし、その後の日本語普及の挫折を考察する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、コロナ禍のため、遠方での史料調査を実施することができず、研究が100%予定通り進めることができなかったためである。2023年度は、積極的に遠方での史料調査と収集を行い、これらを分析し考察することで、最終年度として相応しい研究成果をあげる予定である。
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Research Products
(2 results)