2023 Fiscal Year Annual Research Report
Cultual Propaganda for ''Greater East Asia Co-Prosperity Sphere''and the Japanese Language :Linkage of Expansion and Regurgitation between Japan,Manchuguo and the Mengjiang Regime
Project/Area Number |
19K00726
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
酒井 順一郎 九州産業大学, 国際文化学部, 教授 (10608269)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 「満洲国」 / 回教徒 / 富永理 / 張徳純 / 私立奉天回教文化学院 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度の研究成果である「蒙疆政権」下の回民工作のために創立された善隣回民女塾と日本語教育の役割を基に「満洲国」における回教徒教育の問題を1944年作成された富永理の報告書を中心に分析した。反共産主義の勢力を大きくし、「大東亜共栄圏」構築のためには「満洲国」「蒙疆政権」を始めとした大陸の回教徒を懐柔することが重要であった。そこで、回教徒への教育を充実させなければならず、日本語教育が重視された。当時、回教徒向けに、初等・中等教育機関、阿文専科、私塾、回民義塾など多種多様の学校があったが、教員は不足していた。また、宗教上、阿文や経典が重視されており、「満洲国」が求めた近代教育に対し反宗教思想があるとし、独自の教育を行っている機関も少なくなかった。よって、回教徒の教育機関に「満洲国」の教育方針を従わせることは容易ではなかった。 これ等の状況も新学制以降、変化してくる。例えば私立奉天回教文化学院のように「国民高等学校規定」に則った教育を行い、「満洲国」の「忠良之国民」の代表例である役人の育成も行うようになっていった。また、日本語、満語、アラビア語の3ヶ国語を教育するのであるが、学ぶ側の負担は大きかったと推測できる。やがて、国民初等・優級学校の大部分は回教的教育を希薄にしていき、回教徒の中から従来の回教徒が運営していた学校を無意味であるという考えが生まれ、新学制以降、「満洲国」が推し進めた教育によって、回教徒が従来守ってきた社会文化を徐々に瓦解させていったのであった。 尚、研究論文としてとして、「満洲国」における回教徒問題‐1944年発表の富永理の調査報告資料を中心に‐」『新世紀人文学論究』第8号2024年2月を発表することができた。
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