2020 Fiscal Year Research-status Report
Description of the history of Japanese language teaching in Russia and Central Eastern Europe:focusing on the changes from the socialist era
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19K00735
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
小川 誉子美 横浜国立大学, 国際戦略推進機構, 教授 (50251773)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日本語教育 / 日本研究 / ロシア / 社会主義時代 / 現代史 / 対日政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
旧ソ連の日本研究は、欧米の他の国々をはるかに凌ぐレベルで進められていた。2020年度は、ソ連時代の日本研究やそれを支える日本語教育が、日ソ間の外交関係を背景にどのように展開したのかというテーマのもと、文献資料をもとに論文(制度と研究成果に関する論考と日本語母語話者教師に関する論考)を発表した。一方、予定していた日本資料専門家会議(EAJRS於ロシア科学アカデミー)が中止されたため、当地での文献資料の収集はかなわなかったが、リモートによる聞き取り調査が実現し、ブルガリア、ロシア、日本の関係者から、ソ連時代の実態解明につながる重要な口述資料の提供を受けることができた。 特に、1950年代から80年代にレニングラード大学で日本学を修めた修了生の方々による口述資料から、ソ連国籍の日本語母語話者がレニングラード大学の日本語教師として長期に渡り教壇に立っていたこと、その後、大阪外国語大学(現大阪大学)ロシア語科が、ロシア専門家を派遣し、70年代からソヴィエトの崩壊までの約20年間に日本語教育にあたっていたことが明らかになった。これまでの日本語教育史研究において、当時代の日本研究・日本語教育の展開や、ソ連時代というくくりで考察する有用性に注目されることはなかったが、冷戦下のレニングラード大学の教師、修了生の方々から提供された今回の証言は、これらの空白部分を埋めるもので、本研究の意義をあらためて認識させてくれた。 優秀な人材を投入して進められた冷戦時代のソ連の日本研究、日本語教育は、スターリン時代の対日政策を反映するものであり、各時代各地で行われてきた様々な言語教育の類型の一つとして日本語教育史に加えられるべきであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ロシア科学アカデミー訪問が中止されたため、研究交流や古文書の収集の機会を失った。しかし、レニングラード大学の修了生や当時の日本語教師、ロシア側の研究者の方々との接触がかない、本テーマの核心に関わる貴重な口述資料を得ることができた。現地訪問による研究交流の臨場感や醍醐味は味わえなかったが、当初予測しなかった方法で、重要な情報が提供され、本年度の目標に対し、満足できる成果が得られたことに深く感謝している。この成果は次年度内に発表し、関係者からの意見を広く求めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、特に、ロシア側の文献、口述資料収集の範囲を広げ、当該地域の冷戦時代の日本語教育の総括作業に入る。次に、ソヴィエト崩壊後の当地における日本研究・日本語教育の変容と、ロシア・中東欧地域の日本研究・日本語教育にもたらした影響について、制度や教師に焦点をあてて分析し、言語教育の類型を抽出する。以上の視点から当地域の日本語教育の現代史を記述し、国内外のオンラインで開催される研究会にてその成果を発表する。
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Causes of Carryover |
2020年度は、予定していた海外出張がかなわず、旅費未使用により残額がでたが、2021年度は、書籍や口頭資料の収集、発表のための諸経費にこれをあてたい。
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Research Products
(5 results)