2021 Fiscal Year Research-status Report
Description of the history of Japanese language teaching in Russia and Central Eastern Europe:focusing on the changes from the socialist era
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19K00735
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
小川 誉子美 横浜国立大学, 国際戦略推進機構, 教授 (50251773)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 旧ソ連 / ロシア・中東欧 / 日本語教育 / 大阪外国語大学 / レニングラード大学 / 口述資料 / 現代史 / 日本語教員 |
Outline of Annual Research Achievements |
ロシア・中東欧の社会主義時代の日本語教育は、各地で多様な展開をとげたが、日本語教育史として記述されていない部分も多く、空白を埋める作業が必要である。中でも、旧ソ連の日本研究は、細分化された各分野で多くの研究者が誕生し成果が発表されてきた。1940年代の10年間を例に挙げると、レニングラード大学(現サンクトペテルブルク大学)一機関の日本語言語学の分野だけでも10名以上に学位が授与されるなど、他の欧米諸国をはるかに凌ぐレベルで進められた。本研究はそれを支えた日本語教育と日本人講師に注目し、冷戦時代から現代までの展開を主な点を中心に記述するものである。 国際交流基金は、冷戦時代の東欧各地の諸機関に日本語教育専門家を派遣していたが、旧ソ連には派遣していない。しかし、主な機関では日本語母語話者が継続的に教壇に立っていた。一例をあげると、レニングラード大学には、1950年前後から、ソ連国籍の日本人が20年に及び日本語を教えていた。1970年以降は、ソ連高等教育省との協定に基づいて大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)のロシア語学科の教員のべ約18人が派遣され、日本語教育を担当した。ロシア・中東欧地域の当時を知る各方面の関係者から情報提供を受け、空白であった冷戦時代の日本語母語話者教師と当時の日本語教育の詳細が明らかになりつつある。その中でも、日本語教師に着目すると、この制度でソ連に渡った大阪外国語大学の教員は、当時の日本のロシア語教育とソ連の日本語教育両方を担当したという点で、他に類を見ない。本研究は、時代の制約の中で教壇に立つ日本語教員に焦点をあて、当地域の現代日本語教育史を記述し、冷戦時代の日本語教育や東欧地域の日本語教育の特質について明らかにしていくものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度までは、関係者から提供された口述資料を精査し、冷戦時代の日本語母語話者教師と当時の日本語教育の詳細について空白を埋める作業を行った。それをもとに、日本側の取り組みに焦点を当てた成果を発表した。収集した資料は、公刊された文献と口述資料を中心とし、本年度予定していたサンクトペテルブルク大学等、ロシアの古文書の訪問、資料の取り寄せともに実現しなかった。成果の一つは、大阪外国語大学ロシア語学科が冷戦下のソ連高等教育省との間ですすめた教授交換など、当時の社会状況を反映した言語教育の姿が浮かびあがってきたことであり、論文として発表した。口頭発表については、日本資料専門家会議(EAJRS、サンクトペテルブルクロシア科学アカデミー開催)をはじめ国内外で口頭発表を行ったが、すべてリモートでの発表・参加となった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、ロシア・中東欧の資料を収集しつつ、ソ連の日本語教育を中心に発表してきた。2022年度は、ソ連留学経験者を中心に日本研究をすすめる地域や、日本研究において独自の展開を続ける国々の日本語教育に焦点を当てる。海外の公文書訪問や資料の取り寄せについては、不確定な部分も多いので、関係者からの口述資料の収集に重点を置き、現代日本語教育史の空白を埋めていく。これまで収集した資料の一つに、ソ連・東欧の日本研究者や日本語教育に関する新聞記事がある。当時の日本のメディアの視点も資料として扱い、各時代の中で日本語教育を位置づけ、日本語教育に関する包括的な考察をめざす。
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Causes of Carryover |
第31回日本資料専門家欧州協会年次大会(ロシア科学アカデミー、サンクトペテルブルクにて、2021年9月開催)で口頭発表を行い、同時に、当地での公文書館をめぐる予定であったが、オンラインでの参加が可能となった。コロナ禍での渡航を断念したことにより、旅費が不要となった。これは、2022年度に開催される、海外研究会(ハンガリー、ブタペストで開催)への現地参加にかかる諸費用に充てる。この対面参加も厳しくなった場合、現在執筆中の原稿の完成、刊行までにかかる諸費用に充てる予定である。
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Research Products
(5 results)