2020 Fiscal Year Research-status Report
「移動の世紀」の言語教育を考える ー移民統合とCEFR-CVの基礎研究ー
Project/Area Number |
19K00736
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
真嶋 潤子 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 教授 (30273733)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 移民統合 / CEFR / CEFR-CV / 言語教育政策 / 日本語教育 / 移動の世紀 / 複言語教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本社会の喫緊の課題の一つとして、少子高齢化による人口減少、労働者不足への対応策として外国人住民の受け入れを進める方向で動いている。本研究は、今後の増加が見込まれる(定住)外国人(本研究では便宜上「移民」と呼ぶ)を対象とした言語教育を考えるための基礎研究を行うことを目的とする。 日本語や日本文化を学ぶ目的で来日し、学習動機も高い留学生とは異なり、特に強い学習動機もあるとは限らず時間もかけられない「技能実習生」をはじめとする「成人の移民」への言語教育は、国内にはそのノウハウや研究の蓄積が不十分である。そこで移民への教育、とりわけ言語教育について、経験の長い欧州の研究のメタ研究を行い、その知見や成功の鍵、あるいは成果が上がっていない場合の要因を抽出したい。 本研究では、欧州評議会で開発され欧州域内外でインパクトを与えている「ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)」(2001)とその増補版CEFR-CV (Companion Volume)(2018、2020)を、表面的でなく理念背景から深く理解し、その実践研究のメタ研究をするところから始めたい。 1年目は、予定通り、移民への言語教育に関する文献調査と、2年目の現地調査の準備を行った。 その成果の一部は、2019年8月にセルビアのベオグラード大学で行われたヨーロッパ日本語教師会での基調講演に盛り込み、現地で情報交換をすることもできた。 2020年度は、ドイツ、フランス、オランダにおける現地調査を計画していたが、新型コロナウイルスの影響で、渡欧できなかったので、現地の事情に明るい調査協力者に、メールやオンライン会議でのインタビューを行なった。また、国内の「技能実習生」の日本語の口頭能力アセスメントを小規模(ベトナム 人対象者12名)だが行なうことができた。この分析から、移民受け入れのための日本語教育への提言ができればと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標通り、文献収集とデータベース化は進んでいる。初年度はドイツを中心に、フランス、オランダ、イギリス、セルビアでもネットワークを構築し、調査を始めることができた。2020年度は、COVID-19のために海外調査ができなかったが、ドイツの移民統合政策については、ドイツ在住の研究協力者の助力もあり、政府関係の文書や文献、またドイツ語教育の教材も取り寄せ、そこから、日本で就労者特に「技能実習生」の日本語能力の実際を把握するために、口頭能力アセスメントを計画し、12名と小規模ながら実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
欧州の移民統合の現地語教育の面での施策に関する情報を、直接現場で観察や対面調査ができると良いが、COVID-19 の推移によって無理であれば、オンラインによる情報収集と文献のさらなる収集と読み込みを行い、本研究の成果をまとめたい。 「日本語教育の参照枠」二次報告(文化庁2021年3月)も発表され、本研究の結果との整合性も期待できるので、昨年度に行なった「ベトナム人技能実習生」の日本語口頭能力アセスメントの分析結果を踏まえ、現場で使えるような口頭能力アセスメントの利用に関する提案を行いたい。 2021年度には、これまでの成果を発表する予定で、8月には学会発表が採択されている。さらに複数の書籍が刊行予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19のために予定していた海外出張ができなかったため。その分、文献収集と重要な文献で和訳のないものは翻訳を依頼し、さらに日本語口頭能力アセスメントのために謝金として使用した。2021年度は、海外出張ができれば行うが、できなければ、2020年度のように文献データベースのために資料収集と、必要なら和訳を行い、また改良した日本語口頭能力アセスメントでデータ収集を行うことを考えている。
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