2022 Fiscal Year Annual Research Report
学習者の批判的思考を促す説明活動 ーデザイン実験による授業の設計と実践、評価ー
Project/Area Number |
19K00740
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小山 悟 九州大学, 留学生センター, 准教授 (50284576)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日本語教育 / 批判的思考 / コンテントベース / デザイン実験 / 知識構成型ジグソー法 |
Outline of Annual Research Achievements |
筆者は現在、コンテントベースの日本語授業(CBI)に「知識構成型ジグソー法」(三宅 2011)をベースにした「教え合い」と「話し合い」の活動を導入することで、学生たちの批判的思考を促す新たな教授法の開発に取り組んでいる。本研究はその一部であり、資料などを通じて学習した内容を互いにわかりやすく説明し合う「教え合い」の指導に焦点を当てている。 今年度の調査は、昨年度と同様、香港の高等教育機関で日本語を学ぶ12名の学習者(中級前半~中級後半)を対象に、オンラインで5日間行った(テーマも同じである)。昨年度の調査では、それまで1度きりで終わらせていたジグソー学習を、視点を変えて3度繰り返す授業デザインへと変更し、各回の合間に「揺さぶり発問」を行うことで、学生たちの思考を深めさせようと試みた。しかし、調査終了後に録画データの分析を行ったところ、エキスパート活動では(グループで協力して読むはずの資料を)各自が無言で読む時間が長く続き、ジグソー活動でも資料の説明と理解に手間取り、話し合いがほとんど行われていないことが明らかになった。そこで今年度は、これまで授業内で行っていた資料の読解(+タスクシートへの解答記入)を事前に予習として行わせることにした。その結果、エキスパート活動ではどのグループも、タスクシートに記入した内容を確認した後、グループとしての見解をまとめる話し合いへと速やかに移行しており、(2021年度はほとんどできていなかった)説明の予行練習にも十分な時間をかけられていた。結果、ジグソー活動においても、聞き手から話し手への聞き返し(確認チェックや明確化要求など)は大幅に減っていた。この結果から、資料を事前に読ませるなどして内容理解を一定程度深めておけば、学習者の日本語力が中級前半~中級後半レベルであっても、的確な説明ができ、批判的思考を促す下地が作れることが示された。
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