2019 Fiscal Year Research-status Report
対話的支援の多角的分析と支援対話メタデータベースの開発
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19K00742
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
黒田 史彦 首都大学東京, 国際センター, 准教授 (60579168)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木下 直子 早稲田大学, 日本語教育研究センター, 准教授 (40364715)
トンプソン 美恵子 (平野美恵子) 山梨学院大学, 経営学部, 特任准教授 (20401606)
大森 優 神田外語大学, アカデミックサクセスセンター, 講師 (60806991)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 対話的支援 / 支援対話 / 日本語学習アドバイジング / アカデミック・ライティング支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本語学習アドバイジングおよび日本語による学術的文章の作成支援(アカデミック・ライティング・サポート)の熟練支援者に協力を仰ぎ、日本語学習者に対する対話的支援の模擬セッションを実施した。この支援対話の実態をビデオ録画した動画記録は、「支援対話データ」として、今後の分析における基礎データとなる。 支援対話データを元に、発話、音調、あいづち、言いよどみ、褒め、聞き返し、笑い、沈黙、話題の開始・転換・終了といった言語行動だけではなく、表情、目線、うなずき、ジェスチャーなどのパラ言語行動も克明に記録した「動画資料」を一部作成した。さらに、発話内容は、今後の会話分析等に耐えられるよう詳細に文字化し、「テキスト資料」とした。 模擬セッションの録画映像を熟練支援者と共に見返しながらプレイバック・インタビューを行い、自らの実践を振り返ってもらった。発話の意図、質問の狙い、話題の切り替え、間の取り方といった意識的な行動はもちろん、無意識的な言語的・パラ言語的行動も含めて内省・内観を促し、実践上の秘訣やコツといった実践知の言語化を試みた。これらは、経験学習論における経験学習サイクルの「内省的省察(reflective observation)」および「抽象的概念化(abstract conceptualization)」に相当し、対話的支援の貴重な実践データとして、今後の分析対象とする。 対話的支援の「動画資料」「テキスト資料」に加え、支援上の実践知に関わるプレイバック・インタビューのデータが揃ったことから、本研究に必要な基礎データとなる支援対話データが一通り準備できたことになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、基礎データとなる「支援対話データ」の収集に注力する期間と位置付けており、ほぼ計画通りの成果が得られている。日本語学習アドバイジングに関しては、熟練支援者による模擬セッションを約10時間実施し、ビデオで録画した。模擬セッション後に合計20時間程度のプレイバック・インタビューを行い、実践上の狙いなどを洗い出すことができた。同様に、アカデミック・ライティング支援の熟練支援者による模擬セッションも約10時間記録し、プレイバック・インタビューを実施した。新型コロナウィルス感染症の影響により、2月-3月に思うようにインタビューが実施できなかったため、軽微な遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、支援対話データを拡充すると共に、支援対話データを基礎デ―タとした分析活動を進めていく。対面による模擬セッションの実施が難しいことから、オンラインによる模擬セッションおよびインタビューの可能性も検討する。 得られた支援対話データのうちの動画資料およびテキスト資料に関しては、ELANを活用したアノテーションを施し、マルチモーダルな分析に着手する。プレイバック・インタビューのデータに関しては、実践知の抽出を試み、分類・整理を進めていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の影響により、調査協力者へのインタビューが一部延期となったため、謝金の一部を次年度に繰り越すこととなった。また、2月-3月に参加を予定していた学会・研究会が中止となったため、旅費の一部を次年度に繰り越した。社会情勢が落ち着いたら、インタビューを再開すると共に、情報収集や成果発表のために学会・研究会へ参加する予定である。
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