2020 Fiscal Year Research-status Report
対話的支援の多角的分析と支援対話メタデータベースの開発
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19K00742
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
黒田 史彦 東京都立大学, 国際センター, 准教授 (60579168)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木下 直子 早稲田大学, 日本語教育研究センター, 准教授 (40364715)
トンプソン 美恵子 (平野美恵子) 山梨学院大学, 経営学部, 特任准教授 (20401606)
大森 優 神田外語大学, アカデミックサクセスセンター, 講師 (60806991)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日本語学習アドバイジング / 日本語アカデミック・ライティング支援 / 対話的支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度中に、日本語学習アドバイジングの模擬セッションを10件、日本語アカデミック・ライティング支援の模擬セッションを5件実施した。前者に関しては、早くから日本語学習アドバイジングの実践に取り組んでいる日本語学校から協力を得ることができ、先進事例の実践データが得られた。後者に関しては、組織的にライティング支援を展開している大学から協力を得て、同じ学習者に対する継続的な支援のデータを得ることができた。すべての模擬セッションの後にプレイバック・インタビューを行い、支援者による言動の狙いや意図などを確認・記録できた。 新型コロナウィルス感染症の影響により、支援者と学習者が直接顔を合わせて実施する対面型の模擬セッションが困難となったため、いずれの模擬セッションもオンライン(zoom)で実施した。日本語学習アドバイジングもアカデミック・ライティング支援もオンラインによる実践とは相性がよく、支援のための対話展開に関しては特に支障がなかった。むしろ、インターネット上にある学習リソースの紹介などは、対面よりもスムーズに進んだと言える。ただし、対面の場合に特別な意味を持っていた支援者による視線の投げかけやメモの受け渡しなどについては、オンラインでは再現が難しいようであった。その一方で、オンライン実践ならではの工夫も記録できたので、データベースの中に盛り込んでいきたい。 日本語学習アドバイジングおよびアカデミック・ライティング支援における実践上のコツ(実践知・経験則)は、すでに30程度抽出できている。コツを端的に表す言葉にまとめたながら、整理を進めている。これらの言葉を模擬セッションの動画上に書き込み、コツを体現しているシーンを検索して視聴できるよう準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年2月に実施した模擬セッションの音声データを、2020年度内に文字化(外部委託による文字起こし)する予定であったが、2021年度にずれ込んでしまった。 新型コロナウィルス感染症の終息を待ち、対面による模擬セッションの実施を予定していたが、残念ながら対面セッションは実現できなかった。今後の「新しい生活様式」の時代においては、オンラインによる対話的支援が求められることを見越して、すべてオンラインによる模擬セッションに切り替えた。 日本語学習アドバイジングに関しては、支援実践上のコツが20程度抽出できた。それぞれのコツを端的に表す「今日の見通し」「スタート地点の確認」といった言葉にまとめ、支援者間で共有したり、自らの実践を振り返るための観点とすることを目指している。 日本語アカデミック・ライティング支援に関しても10程度のコツを言語化し、整理を進めている。例えば、「ひとときのチーム」「考えるヒント」といった実践上のコツをまとめ、模擬セッション動画の該当シーンにキャプションとして書き込んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
日本語学習アドバイジングおよび日本語アカデミック・ライティング支援における対話的支援の実践に関わるコツの抽出・整理を継続する。2021年度に入ってから文字化した模擬セッションより抽出したコツも収容し、より精度を高める。その後に、現在までに抽出できている30程度のコツを体系化・構造化する。 得られたコツは、模擬セッション動画の該当シーンにキャプションとして書き込み、支援者による言動の狙いや意図も表示させる。支援者が実践上のコツを手掛かりに検索し、該当シーンにジャンプして視聴できるような動画データに仕上げる。コツの名前から複数の動画データにおける該当シーンにアクセスできるようなデータベースを構築する。対話を文字起こししたスクリプト・データも添えて、新人支援員の研修などで使えるデータベースとしてインターネット上に公開していく。 動画データは専門的な動画編集ソフトウェアを使って編集していたが、最近になって必要な機能がYouTubeに実装されたことが判明した。利用者の利便性を考慮し、特殊なファイル形式で作成・公開するのではなく、YouTubeを用いて広く公開することも検討している。 抽出したコツやデータベースに関する成果を取りまとめ、各種学会や研究会で発表する。国内だけではなく、国際学会での発表も目指している。発表から得られたフィードバックを踏まえ、論文化にも取り組む。また、実践の現場におけるデータベースの活用も進め、将来的な拡充を見据えている。
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Causes of Carryover |
2021年2月に実施した模擬セッションの文字化(文字起こし)を専門業者に委託しようとしたが、2020年度内には完了しないとのことだったので、会計上のトラブルを避けるために翌年度に持ち越した。また、国内外における複数の学会参加および学会発表を計画していたが、すべてオンライン開催となったために、交通費に余裕が生じた。 文字化に関しては、2021年度に入って早々に外部委託したので、すでに当初予定の進捗を取り戻している。交通費に関しては、アクセスが容易になったオンライン学会などへの参加回数および発表回数を増やすことで、当初予定からの遅れを挽回すると共に、計画以上の成果発信へと結び付ける。
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Research Products
(3 results)