2019 Fiscal Year Research-status Report
留学生のキャリア意識・支援の実態解明と組織横断的なキャリア支援システムの構築
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19K00747
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
寅丸 真澄 早稲田大学, 日本語教育研究センター, 准教授(任期付) (60759314)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 明香 東京立正短期大学, 現代コミュニケーション学科, 准教授 (30442106)
佐藤 正則 山野美容芸術短期大学, その他部局等, 講師 (50647964)
家根橋 伸子 東亜大学, 人間科学部, 教授 (80609652)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | キャリア意識 / 自律的キャリア意識 / 留学生と日本語教師のずれ / 中国人留学生とベトナム人留学生 / キャリア観 / キャリア・スパン / 異文化理解 / コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、まず本調査に入る前の基礎調査として、キャリアに関する日本語教師と留学生の意識の「ずれ」という観点から、留学生のキャリア支援の実態と課題について検討した。分析の結果、調査対象となった教師と留学生の間には、(1)キャリア観、(2)キャリア・スパン、(3)異文化理解、(4)コミュニケーションに関する4つのずれが生じていることがわかった。このような「ずれ」の実態から、留学生が自身の将来について自律的、意識的に考え、柔軟に行動できるようになるための「自律的キャリア意識」の育成や、教師が留学生それぞれの個別性や社会文化的価値観を尊重し、留学生と目線を合わせて行う一対一の対話の必要性が示唆された。 次に、これらの「ずれ」の背景には価値観や社会文化の差異があると考えられたため、日本の高等教育機関における在籍数が多い中国人留学生とベトナム人留学生それぞれを対象にインタビュー調査を行った。本調査から明らかになったのは、出身国や文化、生活背景によるキャリア意識の違いと、自身のキャリアへの意識の希薄さであった。また、留学生は日本での生活や仕事に期待を抱く反面、職業選択における困難を排除したり、容易に進路変更ができると考えたりするなど、短期的な実利を重視する傾向が見られた。 このようなキャリア観は、キャリアを人生の重要な選択の連続として捉え、仕事を人生にとって意味深い重要なものと位置づける人間教育的、理念的な教師のキャリア観とは大きく異なる。これら一連の調査は、首都圏大学および地方大学に在籍する留学生、および高等教育機関関係者の実態の一端を明らかにしたという点において、次段階の調査研究にとって有益な基礎調査になったと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、日本語学習者のキャリア意識と具体的なキャリア行動、および教育関係者のキャリア意識を明らかにするため、首都圏大学および地方大学の日本語学習者、および教育関係者に対して、アンケート調査、およびインタビュー調査を実施し、実態の分析を行う予定であった。しかし、コロナウイルスによる新型肺炎の拡大による大学封鎖、あるいは授業のオンライン化等により教育環境が一変したため、予定されていた調査が実施不可能となった。これにより、調査全体がやや遅滞したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、第一段階の実態調査を引き続き実施するとともに、第二段階の調査分析・施策の検討を進める。 まず、留学生が自身のキャリアについてどのように捉えているのか、どのような行動や活動を行っているのかというキャリア意識、および具体的なキャリア行動に関するアンケート調査を首都圏大学、および地方大学の両方で実施する。また、それらの調査対象者の中の一部留学生と、高等教育機関において留学生のキャリア支援に関わる関係者を対象にインタビュー調査を行い、量的・質的両面から、留学生と教育機関関係者のキャリア意識と、具体的なキャリア行動の実態を明らかにする。 次に、以上の実態調査の調査分析を行い、教育機関の種別に学習者のキャリア意識と行動、支援組織の制度体制、支援者の問題意識等の関係性を可視化し、その中で生じている課題や問題を明らかにする。その後、課題や問題を解決、解消するために行うべき施策を検討、立案する。具体的には、たとえば学習者のキャリア意識の深化を目的とした日本語プログラムや初年次プログラム、ワークショップの実施、インターンシップのための日本語支援、キャリア支援組織と連携した「やさしい日本語」による情報発信、キャリアイベントの実施、キャリア支援を行う教員への日本語サポート等が想定される。
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Causes of Carryover |
今年度は、首都圏大学および地方大学において、日本語学習者のキャリア意識を明らかにするためのアンケート調査の作成と実施を行う予定であった。しかし、コロナウィルスによる新型肺炎の拡大により、アンケートを実施する予定であった大学構内の封鎖、および授業のオンライン化等により、調査の実施が不可能となった。さらに、調査結果の発表を学会等で行う予定であったが、それら発表も中止された。そこで、これら調査の作成費用と実施費用、および調査発表のための出張費等が残ることとなった。
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Research Products
(2 results)