2021 Fiscal Year Research-status Report
留学生のキャリア意識・支援の実態解明と組織横断的なキャリア支援システムの構築
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19K00747
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
寅丸 真澄 早稲田大学, 日本語教育研究センター, 准教授 (60759314)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 明香 東京立正短期大学, 現代コミュニケーション学科, 准教授 (30442106)
佐藤 正則 山野美容芸術短期大学, その他部局等, 准教授 (50647964)
家根橋 伸子 東亜大学, 人間科学部, 教授 (80609652)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 留学生 / キャリア意識 / キャリア支援システム / アンケート調査 / インタビュー調査 / 質的・量的研究 / 組織横断的な連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の実績は主に次の三点である。 一点目は、これまでコロナ拡大の影響で実施できなかったアンケート本調査を実施した。パイロット調査において個人情報の保護や回答の信頼性、作業手順等を確認し、首都圏、関西、四国、中国、九州圏の外国人留学生を対象に約50の質問項目についてオンライン調査を実施し、260名から回答を得た。それらの回答について統計分析を行い、留学生の留学目的は、日本の社会文化への関心、就職、日本の社会文化への関心と就職という3つに、また、キャリアに関する価値観は、個人志向、社会志向、個人社会志向という3つに分類できることと、各クラスターの特徴を明らかにした。さらに、留学目的やキャリアに関する価値観に関わらず、キャリアのための学習や活動が十分になされていない現状を明らかにした。 二点目は、大学において留学生のキャリア支援を行う職員とキャリアコンサルタントに対してインタビューを行い、留学生キャリア支援の実態と、留学生自身の課題を明らかにした。留学生支援は日本人学生の後手に回る傾向がある上、日本語力の問題から留学生自身が積極的に大学の支援を受けようとしない傾向がある。特に大学院生や短期大学生はその傾向が強い。本研究では、その現状を留学生キャリア支援の不足と、教育機関におけるダイバーシテイ&インクルージョンという2つの観点から捉え、学会報告を行った。後者の学会報告では、留学生のキャリア支援を行うコンサルタントとの連携を実現した。 三点目は、質的インタビュー調査によって留学生のキャリアに対する意識の一端を深く掘り下げた。これまでも首都圏と地方の四年制大学、短期大学に在籍する留学生に対して継続的に調査を実施してきたが、多様な背景を持つ留学生の語りを集めることにより、実態がより明らかになったと言える。 以上、主に三点の研究結果は、今後の留学生のキャリア教育に資するものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度より拡大したCOVID19の影響によって国内大学に入学したり留学したりする留学生が激減し、アンケート調査やインタビュー調査の調査協力者として予定していた留学生を確保することができなかった。特に本研究では、首都圏と地方の四年制大学と短期大学に在籍する、様々な背景を持つ留学生を調査対象としていたが、いずれも十分な協力者を確保できず、統計分析をはじめとするそれ以降の分析作業が遅滞した。また、本研究における分析結果を踏まえた授業実践の準備を行っていたが、本実践も、COVID19の影響により、通常の対面形式とは異なるオンライン形式で実施しなければならないという授業形式に関わる条件と、履修者数が確保できないという2つの問題に直面し、本研究で計画していた授業実践の実施が不可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の重要課題は、第一に留学生に対する質的、量的調査、および留学生のキャリア支援を行う支援者の観点から、留学生のキャリア意識を明らかにすることである。第二に、質的、量的データの分析結果を踏まえて、留学生のためのキャリア教育実践を行い、検討することである。第三に、留学生のためのキャリア支援を充実させていくために、支援に関わる関係者と関係組織、機関の有機的な連携の在り方について検討することである。 第一の課題に関しては、データ収集は随時行われており、今後はこれまで言及していなかった収集データの分析、報告を行うことが課題となる。質的データについては、これまでも留学生の属性等のカテゴリーごとに分析、報告を行ってきた。今後は、それらの調査研究を引き続き進めるとともに、特に留学生のキャリア支援に関わる職員やキャリアコンサルタントを対象とした質的データの分析、報告を行っていく。また、量的調査については、2021年度に収集したデータについてすでに分析と報告を始めているが、さらに多様な観点からの分析を行い、その結果を学会や学会誌等を通して報告していく計画である。 第二の課題に関しては、留学生のキャリア支援の在り方について、留学生をとりまく関係者と関係機関の有機的な連携という観点から、留学生と支援者に対してこれまで行ってきた上述の数々の調査分析結果を踏まえて、留学生に対するキャリア支援の具体的な実践を実施、検討していく計画である。 第三の課題に関しては、留学生のキャリア支援に関する問題は、本研究が主な研究対象としている高等教育機関のみでは対応しきれない問題であるため、引き続き、留学生支援を行う関係者と関係組織、機関の知見を活用し、組織横断的な留学生キャリア支援の在り方を検討していく計画である。
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Causes of Carryover |
2020より拡大したCOVID19の影響により、当初計画していたアンケート調査とインタビュー調査の規模が縮小した。また、研究の成果報告のため計画していた国内外の学会参加、および出張がすべて取り止めになったことにより、2021年度において未費消額が生じている。2022年度は、2021年度に収集したデータ分析費、および研究の成果報告のための学会参加費や出張旅費として予算を費消する計画である。
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