2020 Fiscal Year Research-status Report
台湾総督府文書を基礎資料とした日本語教育政策に関する研究
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19K00748
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
酒井 恵美子 中京大学, 教養教育研究院, 教授 (00217754)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中田 敏夫 愛知教育大学, 教育学部, 名誉教授 (60145646)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 台湾総督府文書 / 植民地教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度2年目の入る科研費での課題は2つあるが、1つ目の課題は植民地期の台湾における「同化政策・皇民化教育」については出張が難しく、文献収集のための調査が計画通りには進まなかった。デジタル化されている国会図書館などの資料を収集し、従来の研究との対照を行うにとどまった。2つ目の課題は台湾総督府文書の教育関係史料の収集及びデータベース化であるが、昨年度の継続としていくつかの文書の翻刻および翻刻のチェックを行った。明治期については翻刻すべきもののリストをほぼ完成した。かなり膨大な量になったので、翻刻できるかどうかは難しい。切り貼りや訂正回数が多いものなどについては翻刻を行って公開するべきだと思う。また、台湾総督府文書の永久保存文書については大正期、昭和期の史資料収集を開始した。現在、大正期の収集がほぼ終わり、『台湾総督府文書目録』にない大正6年以降は目録を作成した。全体2021年度中に全期の資料収集が終了し、点検に入る予定である。15年保存文書については現在目録もなく利用が困難なため、目録作成のために全体量を確認する作業を行った。15年保存は一般的には廃棄してもいい重要性が低い文書と捉えられがちだが、現在の研究水準からすると不明だった細部を明らかにする利点もある。今まで明らかになっていなかった編纂趣意書や教科書編纂者などに関する資料があることがわかったのは収穫であった。2021年度は15年保存文書について見通しをたて、収集を開始する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年予定していた2編の論文の執筆は台湾及び沖縄への調査が実施できずに最終チェックができないまま持ち越しとなってしまった。1つの目の課題のために行う予定であった教科書レトリックに関するテーマにも着手できなかった。 一方、調査の必要のない部分では研究はほぼ計画通りに進んだ。特に永久保存文書は計画通りだった。15年保存文書は予想外のことも多かった。永久保存と違い、綴り方も統一感がないので、一つ一つ確認する作業が必要である。 全体としてコロナ禍のための講義の準備に追われていた感があり、研究自体の進展に乏しかった。一方で、調査等に出られなかった分、専門外の研究について知見を深める機会に恵まれた。少し広い視野に立って来年度から取り組めると今年度の経験も無駄にはならないだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は2つ目の課題である、すでにデジタル化され公開されている台湾総督府文書の永久保存文書、15年保存文書の目録の作成と資料の整理、翻刻作業などを中心に行う。2021年度も台湾への出張ができない可能性があり、確認作業と並行的に作業を進めることはもはや不可能と考える。確認しながら完成版を作るのではなく、ある程度の無駄は仕方ないとして、できる作業から進めるしかない。特に15年保存文書は予期しなかった文書が残っている可能性もあるので、まず先に全体像を把握するために鳥瞰的な確認作業を行うことにする。そして、台湾への渡航が可能になれば、順次不明点の確認を行い、完成版を作成することにする。翻刻についても然りである。 1つ目の課題については渡台期の史料を中心に「同化政策」をめぐることを想定していたが、現在その履行が困難であるので、もともとの予定にはなかったが、統治期全体を通して閲覧可能なデジタルデータを広範に収集整理する方向に変更したいと思う。これらの進展により新しい知見が得られることを期待して、現在ある資料を再度整理し直し検討を加えることにする。
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Causes of Carryover |
研究費の使途のかなりの部分が旅費であった。2020年度はコロナ禍のためにほとんどの出張をあきらめざるを得なかった。この旅費の執行は研究の中心部分に関わる問題なので、出張が可能になり次第執行することとする。コロナの終熄が遅れ、時間的に難しい場合は再度繰り越しできることを期待したい。
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