2021 Fiscal Year Research-status Report
台湾総督府文書を基礎資料とした日本語教育政策に関する研究
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19K00748
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
酒井 恵美子 中京大学, 教養教育研究院, 教授 (00217754)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中田 敏夫 愛知教育大学, 教育学部, 名誉教授 (60145646)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 植民地政策 / 台湾 / 日本語教育 / 国語教育 / 衛生教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究には二つの目的がある。一つは台湾総督府文書を資料とした研究基盤を作ることで、具体的には現在目録の作成が不完全である大正期、昭和期の教育関係の目録を完成させること、そして、当該資料の中から、研究の基盤となるものを選んで文字化し、公開することである。2021年度は継続中の台湾総督府文書中の教育関係史資料の中から昭和期の目録作成を行った。また、文書中の史資料の文字起こしも一部を2022年度にweb上で公開できるようにその方法も含めて計画を進めた。国内でも残っていない教科書検定関係の文書、第1期台湾読本、習字練習帳、漢文読本の資料を完成させた。ただ、字体など書式については決定することができなかった。かつては文字を原本に近いものにすることは困難であったが、国語教育関連の資料なので、できるだけ原本に近いものにすることが課題である。 二つ目の目的は台湾総督府文書を利用した新しい視点からの研究を行うことである。当初は台湾での同化政策と言語教育に焦点を絞る予定だったが、資料収集など困難な点が多々あり、2022年度は衛生教育とその受容に焦点を絞った。衛生教育はともすれば台湾統治の成功点として日本はもとより台湾、2022年度にはでも評価される。では、どのようにして成功として評価されるようになったのか、政策や制度の整備については多くのことが明らかになっているが、その政策や制度をどのようにして台湾の人々が受容したかについては明らかではない。そこで、台湾に統治前からあった「養生」という概念と統治時代に導入されたと思われる「衛生」という概念がどのように関係し、発展したのか、教育の面から考察するために枠組みを作り検討した。そして、その一部を公表した。これについては2022年度も継続する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
植民地台湾での教育に関しては当初よりやや方向がずれたが、興味深い方向に転換できたと確信する。他の研究者からの協力が得にくい状況であったが、台湾の研究者とのオンライン研究会や国内の歴史研究者などとの研究会に参加することができ、今までにない研究領野からの裏付けができる方向に進んだのは予想外の収穫であった。手応えを感じる。「衛生教育」の広がりと他の分野との関係もモデル化し、総体として捉えられるようにしたい。ただ、そのため、予想よりも検討するべき資料は格段に増え、研究自体の進捗としてはやや遅れている。 台湾総督府文書中の教育関係文書の整理と検討はオンラインで手に入る資料を収集し、整理を継続している。進捗状況は計画通りとはいっていない。主な原因はコロナ禍の影響で研究の補助として資料整理や文字化などに協力者を依頼することが協力者の移動の問題などで困難であったことである。また、台湾への出張もできなかった。最終年度も台湾への調査が不可能であれば、最終チェックをすることができず、持ち越しとなる可能性も出てきて、そのあたりの計画を立て直しつつ2022年度は計画を立て直したいと思っている。
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Strategy for Future Research Activity |
第一の目的である台湾総督府文書を史資料とした研究基盤としての目録と資料の文字化については最終年度である2022年度に一部をwebで公開できるように、最終のチェックを行う。その一方で未完成の目録もできうる限り進める。その際、現在まだ不確定の範囲や書式等を本研究後も継続できるように汎用性を持たせることに留意し最終的な決定をする。 第二の目的である台湾総督府文書を利用した研究については衛生教育と「衛生」の概念および衛生関係の政策の受容について引き続き検討を行う。昨年度は「養生」と「衛生」の概念について検討したが、2022年度はその受容についてさらに詳細に考察する。 この二つの目的を遂行するために、2021年度は研究環境の整備に努めたが、2022年度は日本国内および台湾への調査を計画し、実行するべく努力する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、出張、特に海外への出張が不可能であった。
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