2021 Fiscal Year Research-status Report
サハリン在留日本人とその家族の越境のライフストーリー
Project/Area Number |
19K00754
|
Research Institution | Yamano College of Aesthetics |
Principal Investigator |
佐藤 正則 山野美容芸術短期大学, その他部局等, 特任准教授 (50647964)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三代 純平 武蔵野美術大学, 造形学部, 准教授 (80449347)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | サハリン帰国者 / ライフストーリー / 複言語・複文化 / モデル・ストーリー / 仲介 / 二世 / 多文化社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は以下のような計画を立てた。①サハリン残留についての言説の収集整理、また移民政策、複言語複文化関係のレビューを行う。②今までのフィールド調査をまとめて、発表、論文化を試みる。③コロナ収束後は、改めて日本国内、サハリンのフィールド調査を再開する。 ①②については、サハリン帰国者のライフストーリーを複言語・複文化の観点から考察し論文化した。論文では、1990年代から2000年代の書物や報道記録の調査を通し、一世のモデル・ストーリーには日本語についての「特権的な単一言語観」があること、また近年の二世三世についての論考にも「民族と結びついたアイデンティティ観」があることを指摘した。その上で2000年代に日本に永住帰国した方のライフストーリーを、複言語・複文化の観点から考察した。語り手がサハリンや定住後の日本社会で、どのようにことばを学んできたのかを明らかにし、価値としての複言語・複文化主義の観点から考察した。その上で複言語・複文化主義は、多文化社会における自己や他者の新しい捉え方になりうることを示唆した。 ③については、コロナ感染が比較的落ち着いた時期に、東京、北海道においてインタビューを実施したが、期間も限られていたため、多くは行うことができなかった。しかし、複言語・複文化における「仲介」という観点からは大きな示唆を得ることができた。本調査における成果は2022年5月の日本語教育学会で発表する予定である。サハリンのフィールド調査は、現地のコロナ感染拡大が収まらず実施できなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度も新型コロナウィルス感染症の影響で、サハリンにおけるフィールド調査(ライフストーリー・インタビュー)を行うことができなかった。また、関東、北海道におけるインタビュー調査も十分には行うことができなかった。一方で、二世の方のことばの学びを複言語・複文化の観点から論文にまとめることができた。また、新たに「仲介」の観点からサハリン帰国者の言語活動を見るという着眼点も得ることができた。以上が、現段階でやや遅れているとする理由である。
|
Strategy for Future Research Activity |
新型コロナ感染症蔓延の状況が続いている上に、ロシアのウクライナへの軍事侵攻によって、サハリンにおけるインタビューは断念せざるを得ない。そこで、最終年度を迎えた2022年度前半は、時間をかけて日本国内の調査を改めて行う。また、支援団体、日本語教室の調査も行う。また、後半は、今までの成果をまとめて学会発表、論文化、他分野のサハリン研究者を交えたシンポジウムを企画する予定である。
|
Causes of Carryover |
コロナ感染症が年間を通じて蔓延していたため、予定していたフィールドワークができなかった。調査に伴う交通費、通訳、機材等の諸経費を使用しなかったことが理由である。2022年度は日本国内にフィールドを絞り(主に北海道・東京)、年度の前半には計画的に調査を進める。そのための交通費、宿泊費、通訳等に経費を使用する。また2022年度後半はアーカイブ作成保存の経費、シンポジウムの経費に充てる。
|
Research Products
(2 results)