2023 Fiscal Year Annual Research Report
サハリン在留日本人とその家族の越境のライフストーリー
Project/Area Number |
19K00754
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Research Institution | Yamano College of Aesthetics |
Principal Investigator |
佐藤 正則 山野美容芸術短期大学, その他部局等, 特任准教授 (50647964)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三代 純平 武蔵野美術大学, 造形学部, 教授 (80449347)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | サハリン帰国者 / 複言語・複文化話者 / 仲介能力 / 複数言語資本 / ネットワーク構築 / 社会参加 / 地域性 / 語りと映像 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、サハリン帰国者の複言語話者としての仲介活動に注目してきた。調査の結果、仲介能力を可能にするのは、地域における他者との関係性が大きいことが明らかになった。そして、帰国者の複言語・複文化性を生かした社会参加の場の構築が重要であるとした。しかし,サハリン帰国者が社会参加を実現するためにはどのような条件が必要であるのかまでは明らかにできなかった。そこで、2023年は社会参加実現のための言語活動を可能にするものは何かという観点から研究を進めた。北海道の小都市に住む帰国者に行った継続的なインタビューから、以下の2点が明らかになった。①日本語,朝鮮語,ロシア語の複数言語資本によるトランスナショナルなネットワーク構築,②日本語とロシア語によるローカルなネットワークへの参加、である。サハリン帰国者の家族は朝鮮半島,ロシア,日本にルーツを持つ。世代や住む地域に家族のメンバーによって言語を使い分けながらトランナショナルなファミリーネットワークをつくり,互いに支え合って生きている。一方で,日本語とロシア語を使用し,貿易関係の仕事やロシア語教師の仕事を得ることで,地域への社会参加を実現していた。特に後者の社会参加を実現させる条件としては,日本語学習環境の充実,学習動機を高める社会環境,そして,ロシア語という言語資本が活かせる地域性が必要であることが確かめられた。 以上の成果を、「複数の言語資本による社会 参加の形―サハリン残留日本人永住帰国者2世のライフストーリーから―」(日本語教育学会秋季大会2023)として発表した。また、「語りと映像から考える永住帰国したサハリン残留日本人とその家族のことばと文化」(言語文化教育研究学会年次大会2023)では、研究の大きな課題であったアーカイブズ構築の可能について今後の方向性について論じることができた。
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Research Products
(2 results)