2019 Fiscal Year Research-status Report
Influences from L1 on the Acquisition of English Prosody
Project/Area Number |
19K00757
|
Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
斎藤 弘子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (10205669)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新城 真里奈 明治大学, 文学部, 専任講師 (00838518)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 英語学習 / プロソディー / イントネーション / 母語の転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の英語教育では、イントネーションについては理論に基づく教授法が確立されていない。そのことは、2020年度から教科化となった小学校英語に始まり、中学・高校の各学習段階で使用されている教科書を見ても、生徒が英語イントネーションを習得するための記述が、質・量ともに不十分かつ不正確であることにも表れている。特にイントネーション核がどの音節に置かれるかということは、文の意味伝達にかかわる重要事項であるにもかかわらず、明示的な指導が行われておらず、学習者はそのスキルを身につけることができないまま大学に進学してくる。そこで本研究は、英語学習者がどのような指導を受ければ英語のイントネーションを習得できるかを解明するために、様々な条件を設定して観察することとした。これまで軽視されがちであった英語のイントネーションを効率よく指導できるようにするためである。 初年度である2019年度は、母語の何が転移するかについての複雑な構造を探るべく、まず大学1年次の学生による英語読み上げの音声データ収集を行った。子音・母音の発音のほか、アクセントとリズム、そしてイントネーションの核配置が、コミュニケーションに支障をきたすほどに「英語らしさ」から外れている部分を明らかにし、その上でイントネーションにまつわる項目を含む読み上げ文を作成、イントネーションについての講義を受講する前と後とで、変化が見られるのかどうかを探った。リズムやイントネーションは「習うより慣れよ」と言われることが多く、指導者も学習者も英語圏に身を置かなければこれらのスキルは身につかないと考えがちである。事実を突き止めるべく、1年間の英語圏への留学の前と後とでどのような変化が見られるか、実験計画を立てた。 これにより、英語のプロソディー習得の際問題となる、母語の影響やイントネーションの種類別難易度と習得の順序を考察するための準備ができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者は、これまでに行われてきたL2英語のプロソディーに関する国内外の学術的な文献を渉猟した。また、自らがすでに行ってきた研究について、問題点や不足していることがらを洗い出す作業を開始した。さらに、実験の組み立てを行い、一部の音声データ収集に着手できた。2019年度には、15回の英語プロソディーについての授業を受ける前と受けた後の学生の発音データを収集し、分析のための枠組みを作った。 しかし、年度の終盤にさしかかったところで、Covid-19感染蔓延が起こった影響で、多くの学生が海外留学から早期帰国し、2020年度の海外留学については中止が余儀なくされた。そのため、「英語圏への留学グループ」のデータを取ることができるか、懸念される。 なお、8月にはメルボルンで開催されたInternational Congress of Speech Sciences 2019に研究分担者と共に参加し、世界中の音声学者と交流し、様々な言語を母語にもつ英語学習者のL2習得の研究について、情報を収集することができた。 研究分担者はこの間、ウェールズ語の強勢システムのウェールズ英語への影響を明らかにすべく、録音済みのデータを用いて 様々な文種の聴覚印象的分析およびPraatを使用した音響分析を進めた。そのことにより、質的・量的にデータの拡充を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
2年目に入り、研究代表者は、引き続き条件に合った学習者を集め、録音を行う。(ただし、年度前半は大学の授業が全てオンラインとなったため、音声の録音は対面では行えず各自が収録したものを提出してもらう形となる。)収集した音声データは分析するための統一した枠組みに落とし込み、聴覚と音声分析ソフト を使って分析、整理していく。「典型的な日本語母語話者の発音」として特筆すべきことがあれば、その特徴を随時選び出し、まとめる。この段階で得られた知見があれば、学会等で発表する。 研究分担者は、2年目には前年の分析で得られたデータから、強勢がイントネーションにどのような影響を与えるかについての考察を深め、得られた知見を学会等で発表する予定である。同時に、代表者の研究結果を参照し、新たな音声データが必要になったばあいは、ウェールズで追加の録音を行い、分析する。 これらの観察を通じ、どのような言語教育環境がプロソディーの習得に影響を与えるのか、または与えないのか、詳しく見ていく。本研究では新たに、様々なイントネーションの構成要素間で習得の難易度や順番があるのかを探り、その理由を考える。これらのことを、並行して行われる研究分担者のウェールズ英語話者のプロソディーの具現化の方法と比べ、複眼的な分析を目指す。
|