2022 Fiscal Year Annual Research Report
日本手話のプロソディー(韻律)要素の性質とその習得:手話学習者のストラテジー
Project/Area Number |
19K00779
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
下谷 奈津子 関西学院大学, 産業研究所, 助教 (20783731)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松岡 和美 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 教授 (30327671)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日本手話 / プロソディー / 第二言語習得 / うなずき |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本手話のプロソディーの性質を明らかにすること、また、手話学習者(以下、聴者)によるプロソディーの習得状況を調査することを目的とした。 日本手話のプロソディーについてはほとんど明らかにされていなかったが、海外のプロソディー研究から、手指の保持・非利き手の広がり・うなずき・頭や眉の位置の変化、まばたきなどがプロソディック要素として挙げられており、日本手話も同様の要素が観察された。またその中でも、他の手話言語(アメリカ手話、香港手話、スイス-ドイツ手話)に比べ、日本手話はうなずきの出現頻度が高く、特に節末において重要なマーカーであることが示唆された。 さらに、先行研究から、日本手話のうなずきには、①手指の動きが終点へ達するのと同時に頭が最下点へ達する「同時うなずき」と、②手指の動きが終点へ達し、次の表出のため手型が崩れる、または手の位置が離れ始めてから頭が最下点へ達する「後続うなずき」の2種類が確認されており、2022年度は日本語発話時にほとんど観察されない「後続うなずき」に着目し、日本手話母語話者(以下、ろう者)および聴者の表出を比較分析した。 聴者の語りから見られた後続うなずきのうち、約3割において、ろう者の分析者から不自然または、意味の解釈に混乱をきたすという報告があり、その箇所を分析したところ、手指の動きが終点へ達した後も手型および位置が保持され、そこに頭が最下点へ達していた。音声フランス語の「リエゾン」という音韻現象が、音韻句末をまたぐと現れないのと同様に、日本手話では、うなずきの最下点到達が句や節の境界線を作り、手指の保持はその境界線をまたぐことを許されないと考えられる。聴者の後続うなずきの習得は確認されたが、中には不自然さやエラーも観察された。また、その不自然やエラー表出を通して、日本手話の句末または節末におけるプロソディック要素の関係性が一部解明できた。
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